業種別の調査ポイント(その9)~飲食業~

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
公開日:2017年7月15日

業種別 税務調査のポイント(その9)~飲食業~

税務当局から見た飲食業

税務調査の観点から見た飲食業の第一の特徴は、売上げがすべて現金(=現金商売)であるということです。

現金商売を対象とした税務調査では事前通知をあえて行わずに無通知で調査が行われるケースが多いといえます。

これは、現金商売という業態が納税者からすれば売上の除外(売上除外)が容易である一方、税務当局にとっては正確な所得の捕捉が困難であるため、無通知の調査を行い取り繕う時間を与えずに調査日における現況を確認することにより不正計算の端緒を把握することが狙いだといえます。

(注)売上除外:売上金の一部を帳簿に計上しないこと

現金商売において売上除外が容易になされるのは次の理由によります。

  • 売上金が銀行口座を経由しないため、お金の流れを追うのが困難
  • 複雑な帳簿操作をせずに売上除外が可能(ただ抜くだけ)
  • 売上に関する見積書や請求書、その他関係書類がない
  • 消費者相手の取引であることから取引が資料化されない(「資料せん」が作成されない)
  • 税務調査でバレることがないと高をくくり物事を軽視する

店頭にレジスターを設置していれば、お客さんに交付するレシートの控えであるロールペーパー(ジャーナル用紙ともいいます)あるいは高性能のレジスターであればその電子データがその日の売上の明細を示す資料となりますが、そもそもレジスターを通さない売上があればそれ自体、当然にこれらの売上記録として残りません。

一定の時間帯(閉店前の一定時間など)はレジスターを通さないといった事例も実際にあります。

したがって、税務当局からすれば、飲食店の税務調査における最大の関心事は「売上の計上を適正に行っているか?」に尽きます。

有体に言えば売上除外がないかどうかを確認することが税務調査の核となるテーマとなるということです

具体的には現金の管理をどのように行っているかを確認する作業に重点が置かれます。

 

具体的調査展開

(1) 外観調査・内観調査

調査着手前に調査対象となる店舗の立地環境や客の出入り状況(盛況の程度)、店舗の外観等を確認します。(外観調査)

そして、実際に客として入店し店内の状況を確認します。(内観調査)

  •  レジスターについて(設置しているかどうか、売上を通しているかどうか)
  •    伝票はどんなか(テーブルに持ってくるかどうか、手書きか電子か)
  •  客数や客単価、従業員数、出前があるかどうか
  •  売れ筋商品、商品単価など

【関連記事】 ⇒ 準備調査(その4) ~ 外観調査・内観調査 ~

 

(2) 本調査(臨場調査)

無通知で飲食店に臨場した調査官は、およそ次の手順で調査を進めて売上の管理状況を確認します。

❶ 売上の入金に関する次の証票類の確保

  • 客に渡す「伝票
  • 入金時に交付した領収書の控え
  • レジスターの「ロールペーパー
  • 毎日の売上を記載した「売上日計表
  • 現金出納帳

各段階で不正(廃棄、隠滅、簿外管理)が行われていないかを前後の整合性をチェックすることにより、売上入金が適切に帳簿に記帳されているか確認します。

そこで、調査の第一段階では、上記の各段階で作成される証票類の確保が要求されます

それは、不正計算を証明する資料にもなれば、現金管理が適切に行われていることが確認できる資料にもなります。(調査官は、白黒の確認ができればよいわけで、黒の証拠のみを求めるものではありません。)

レジまわりなどを現況調査することにより、領収書の控え、調査着手前の数日間のロールペーパーや売上日計表などの証票類の確保が可能となります。

現況調査により、操作(不正)が加えられていない、ありのままの資料を把握できる可能性が高まるわけです。

【関連記事】 ⇒ 税務調査の実態(その3)~現況調査

 

❷ 現金監査

調査当日における「レジスターの売上記録(=ロールペーパー)」と「実際の売上入金額(注)」の整合性チェック(これを現金監査と呼んでいます)

(注)実際の売上入金額=レジスターの現金残高-当日に釣銭としてレジスターに入金した額+当日にレジスターから支払った現金仕入代金等

 

❸ 証票類の整合性確認

  • 「伝票(手書き)」と「ロールペーパー」との整合性チェック
  • 「領収書控え」と「売上日計表」との整合性チェック
  • 直近の「売上日計表」と「ロールペーパー」の整合性チェック

これらの確認調査により、どこかの段階で不整合が確認され、売上除外が想定されれば、その解明に注力されます。

その除外された金額を合理的に算定し、もとの売上金額に加算(=所得に加算)することになります。

正当な売上金額=もとの売上金額+1日当りの売上除外額×営業日数

現金・売上管理状況に問題点がなければ、その他の調査項目(仕入、人件費、経費等)の調査に移行します。

 

 推計課税

会社が売上金額を何ら根拠なくでたらめに計上しており、実際の売上金額よりかなり過少に計上されていることが想定された場合は、売上除外額を算定するというより、売上金額自体の再構築をする必要があります。

具体的には、次のような間接的な指標から売上金額や所得金額を推計計算により認定します(法法131)。これを「推計課税」といいます。

  • 法人の財産や債務の増減状況
  • 収入や支出の状況
  • 生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模

例えば、①売上に比例して消費される材料を選定した上でその仕入量を把握し、②その材料の一定数量当たりに得られる売上金額を合理的に算定し、逆算により推定売上金額を算定します。さらに③当該推定売上金額に同規模類似業者の売上金額に対する平均所得率を乗じて所得金額を算定する方法などが採用されます。

なお、青色申告の法人には推計課税は適用できません。したがって当局が青色申告法人に推計課税を行う場合は、いったん青色申告の承認取消処分を先行して行うこととなります。

【関連記事】 ⇒ 現金商売に対する税務調査 収入は不明、領収書なし・・・

 

税務調査における否認事例

  • 売上除外
  • 売上管理ができていないことによる推計課税
  • 食材の仕入れ担当者がバックリベートを受け取っていた
  • 従業員の「まかない」に対し源泉所得税が徴収されていない
  • 減価償却資産の取得の単位が誤っていた

 

 

【関連記事】現金商売における税務調査対応

 ⇒ 業種別:税務調査対応(その4)~小売業・飲食業(現金商売)~

 

【関連記事】その他の業種 税務署はこんな調査をしている↓

 

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