業種別の調査ポイント(その11)~国際取引~
業種別 税務調査のポイント(その11)~国際取引~
国際取引に関する否認の類型
企業が海外進出する場合、現地に子会社を設立し、製造や販売機能を持たせるのが一般的です。そして、税務上問題とされる国際取引の多くは日本にある親会社と海外子会社との取引です。海外子会社との取引を否認する類型には、大きく分けて以下の(1)~(3)の3つのパターンがあります。それ以外の論点としてよく問題となるのが海外における交際費です(下記(4))。
(1) 国外関連者に対する寄附金
発行済株式の50%以上を保有する海外子会社(=国外関連者)に対する寄附金で、税務上その全額が損金の額に算入されません(措法66の4③)。子会社への財務支援はこの類型に該当します。
(2) 移転価格税制
国外関連者との間で行われる資産の譲渡、役務の提供につき、その取引が独立企業間で行われたとした場合に付されたであろう価格(=独立企業間価格)より不利な金額で取引された場合、当該取引を独立企業間価格で行われたものとして取り扱う制度(措法66の4①)
移転価格に関する調査は、独立企業間価格の算定は高度に専門的であることから、以前は、もっぱら専門的なノウハウがある国税局の特定の部署が担当していました。
しかしながら、その国税局の特定の部署だけで全国の国際取引(親子間取引)に対応するのはキャパシティ的に限界があるため、近年においては、以下のような「簡易な移転価格調査」については税務署の調査においても対応するようになってきています
- 海外子会社への無償の役務提供
- 海外子会社に対する無償による管理業務(予算管理、経理・法務サポートなど)の提供
- 海外子会社への低利または無利息による資金の貸付け
(3) タックスヘイブン対策税制
軽課税国に所在する海外子会社(=特定外国子会社等)の所得を、その子会社の持分割合に応じて国内所得に合算する制度(措法66の6①)
(4) 海外交際費等
海外における大型取引の受注に関して支出する受注謝礼金。架空の業務委託契約書を作成して支出するケースも多い。
税務調査における否認事例
- 架空の業務委託契約による海外子会社への財務支援(国外関連者に対する寄附金)
- 海外子会社への出向者の人件費を親会社がすべて負担
- 海外子会社への独立企業間価格より低い価格による資産の譲渡(移転価格税制)
- 海外子会社からの独立企業間価格より高い価格による資産の譲受け(移転価格税制)
- 海外子会社に対する役務提供の対価を収受していない(移転価格税制)
- 海外子会社に対する無利息又は低利による資金の貸付け(移転価格税制)
- 軽課税国(タックスヘイブンなど)のペーパーカンパニーを利用した資金の運用(タックスヘイブン対策税制)
- 軽課税国に所在する海外子会社のタックスヘイブン対策税制の適用除外要件を満たしていないにもかかわらず所得を合算していない
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