国際取引を対象とした税務調査への対応

以下は日本の会社が海外子会社を利用してグローバルに事業展開しているイメージして図示したものです。

日本の親会社の各子会社への関与
  • 日常的な経営指導
  • 業務監査の実施
  • 予算管理
  • 子会社から対価を受け取っていない
  • 各子会社と業務委託契約を締結し、現地の情報を収集
  • 技術、販売スタッフとして出向者の派遣

調査官はどう課税しようと考えているかを読む

税務調査の担当官がこの図を見ればいろいろな検討事項を想定します。

担当官はさしずめシンガポール子会社がタックスヘイブン税制による合算課税の適用会社であるか否かを確認します。

適用会社でない場合、

シンガポール子会社の損益状況に注目。
合算課税をしたら日本の親会社の課税所得にどれほどのインパクトがあるか。

それが大きな金額であれば本腰を入れて調査対象とし、適用除外要件を満たしているかを確認する。

軽課税国であるポーランドに所在する子会社も同様です。

現金なものでしょ(笑)?

担当官は限られた時間内でなるべく大きな成果(非違事項の発見)を挙げることを考え、調査項目の優先順位をつけるのです。

税務当局が指摘しそうなことを徹底的に予測すること

調査を受ける側からすれば、担当調査官がどういう問題を想定して調査を進めているかを把握しておくことは、その対応上、極めて重要な事項です。

国際取引に不慣れな税理士が多いため、
税務署の意のまま課税されることが多い。

上記のシンガポールの件以外にもさまざまな分析、予測が必要です。

以下に例を挙げてみます。

指摘が予測できる例

  • 製造ノウハウ(無形資産)の供与に伴う契約内容、対価の収受状況及びその算定根拠
  • 技術、管理法務、営業スタッフの子会社関与のゼロベースからの洗い出しと対価の収受状況との整合
  • 輸出入(棚卸資産)取引の対価=プライシングの妥当性、価格変更理由の分析(移転価格・国外関連者寄附金)
  • 業務委託契約による役務提供の内容(子会社に対する恣意的な利益供与=国外関連者寄附金)
  • 海外出張社員の役務提供(受益者・負担者の整合判定及び対価の妥当性)(移転価格)
  • イントラグループサービスの問題(IGS:移転価格)
  • 出向社員の給与負担の妥当性(給与格差補填)
  • 研究委託子会社との取引(受益者・負担者の整合判定、研究費の損金算入時期:成果物の受け渡しの時期、予算消化のための先あげ計上の有無)

その他、海外送受金の内容確認、外国税額控除、子会社の財務諸表や外―外取引分析など、想定される調査項目はたくさんありますが、最低上記の事項についてはきちんと説明しておけるようにしておくべきだと考えます。

国際取引は一歩間違えれば大きな課税に発展するリスク

以下は国際取引、特に海外子会社との取引で一歩間違えると大きな課税に発展するおそれのある項目です。

  • 移転価格
  • タックスヘイブン
  • 寄附金認定課税
  • 調整金(謝礼金、なだめ料)に対する交際費課税
  • 国際的な企業再編に関する時価評価の問題(簿価取引の適格性否認)

大手国際会計事務所が提案する租税回避スキームには、税務当局が常に目を光らせている

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元国税調査官の税理士:渡邊 崇甫
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