業種別の調査ポイント(その4)~運送業~

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
公開日:2017年7月3日

業種別 税務調査のポイント(その4)~運送業~

業界の特徴(法定の作成義務がある書類)

税務調査では、請求書や契約書など会計的に処理される具体的な数値が記載された資料よりも更に真実の事実関係を示す資料として信ぴょう性のある「原始資料」の把握に努めます。

税務調査は性悪説の立場で行われますので、請求書や契約書には不正の手が加えられ、改ざんされているかもしれないと考えるからです。

「取引」が実現するまでに至る過程で作成される様々な関係資料を川の流れで例えると、契約書や請求書はもっとも下流で作成される書類となります。「原始資料」は改ざんが行われる蓋然(がいぜん)性が低いと想定される程度の上流にまでさかのぼった流域で作成される書類のイメージです。

【関連記事】原始記録とは ⇒ 税務調査の実態(その2)~帳簿調査~

ところで、一般貨物自動車運送事業者(トラックを利用して荷物を運送し運賃を受ける業者)は、貨物輸送の安全確保の観点から様々な業務資料の作成及び保存が法律で義務付けられています。例えば、「点呼記録簿」、「運転日報」、「タコグラフ」、「運行指示書」などがそれに該当します。

これらは、現実の運行状況を表す資料と想定され、「原始資料」として扱うに適した資料といえます。しかも、これらは前述のとおり法定の作成義務がある書類であるため、税務調査で提示を求められた場合には作成していないとの理由で提示を拒むことができません。国土交通省の行政施策上、作成義務を負う各種書類が税務上の「原始資料」として有効活用できる・・・ここに運送業者における税務調査遂行上の特徴があるといえます。

 

税務上の特例

資本金1億円以下等の中小企業者等に該当する貨物運送業者が、車両総重量が3.5トン以上の新車のトラックを取得し事業の用に供した場合は、一定の特別償却又は法人税額の特別控除の適用を受けることができます。(措法42の6)

 

税務調査で否認される事例

  • 運送収入の除外
  • 外部運転手への報酬を「傭車費」ではなく「給与」として処理
  • 軽油取引税を消費税の仕入税額控除の対象としている
  • 事故による損害額と保険金収入との計上時期のずれ
  • 車両に対する資本的支出を修繕費として処理

 

【関連記事】運送業における税務調査対応

 ⇒ 業種別:税務調査対応(その3)~運送業

 

【関連記事】その他の業種 税務署はこんな調査をしている↓

 

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