業種別:税務調査対応(その3)~運送業~
納税者にとって税務調査は、なんとか追徴税額を最小限にして切り抜けたいものです。
税務調査においては、おおむね業種ごとに調査展開のパターンが決まっています。
自身の会社が営む業種について、どのようなパターンの調査が行われ、それに対しどのように対応したらいいのか・・・それを知り準備することが、税務調査をうまく切り抜けるうえでとても重要です。
ここでは、運送業の特徴とその対応策を見ていきます。
【関連記事】 ⇒ 業種に応じた税務調査の対応の仕方
運送業に対する税務調査のポイントについてはこちらを参考にしてください↓
1 運送業の特徴
一般貨物自動車運送事業者(トラックを利用して荷物を運送し運賃を受ける業者)は、貨物輸送の安全確保の観点から様々な業務資料の作成及び保存が法律で義務付けられています。
例えば、点呼記録簿、運転日報、タコグラフ、運行指示書などがそれに該当します。
これらは、税務調査を行う調査官の立場から見れば、現実の運行状況を表す「原始資料」として扱うに適した資料といえます。
【関連記事】原始資料とは ⇒ 税務調査の実態(その2)~帳簿調査~
しかも、これらは前述のとおり法定の作成義務がある書類であるため、税務調査で提示を求められた場合には作成していないとの理由で提示を拒むことができません。
国土交通省の行政施策上、作成義務を負う各種書類が税務上の「原始資料」として有効活用できる・・・ここに運送業者における税務調査遂行上の特徴があるといえます。
2 運送業の調査対策
- 法定作成義務がある業務資料と整合性のある会計処理
「特徴」の項で述べたとおり、法定作成義務のある前述のような業務資料は調査官に提出を拒むことは事実上不可能です。
そして調査官は、これら業務資料が適正に会計帳簿に反映されているか調査の過程で検証することとなります。
したがって、調査対策としてまず心得るべきことは、業務資料と整合のある会計処理を行うことです。
期末の売上の計上漏れはこれにより防止できます。
売上除外や架空の傭車料の計上をしてもすぐにその不正経理が看破されるのがオチです。
期末の1ケ月間をサンプル調査としてすべての配車、行き先を洗い出し、それらすべてがきちんと売上に計上されおり、それに適合する原価が計上されておれば、調査官はこの会社はおおかた適正処理をしているとして早期に調査が終了することとなるでしょう。
- 傭車料の内容の説明準備(雇用関係の非存在性・対価の根拠)
運送業で問題となる大きな項目に、ドライバーとの契約関係です。「業務委託契約(=傭車料)」に該当するかあるいは「雇用契約(=給与)」かという区分です。この区分の違いによって、源泉徴収義務の有無や消費税の仕入税額控除の可否に影響が及びます。
特に傭車料として計上している場合は、「業務委託契約」の存在をきちんと説明できる事実関係、双方の合意があったことを示す準備が必要となります。
【参考】
- 保険金収入と対応する損失との計上時期の整合
運送業においては、積載貨物などに損害が生じた場合に備えて損害保険(運送業者貨物賠償責任保険など)契約を締結する業者が多いといえます。
このような保険を付保した貨物について実際に損害等が生じた場合の期間損益、すなわち、貨物にたいして被った損害額に係る損金計上時期と、それに対して給付される保険金の益金計上時期との対応関係がもんだいとなるケースがよくあります。
費用収益対応の原則は、一般には売上と原価の間に適用される原則ですが、営業外の損益についてもそのひも付き関係が明らかな費用と収益については対応関係を求められることとなります。
損害が発生し損失額が確定した場合であっても、安易に費用計上せず、その損害に対して保険が付されているかどうか、保険が付されているケースでは保険金の収益認識の時期とずれが無いかどうかを確認することが必要となります。
【関連記事】その他の業種の税務調査への対応の仕方
- 業種別:税務調査対応(その1)~建設業~
- 業種別:税務調査対応(その2)~製造業~
- 業種別:税務調査対応(その3)~運送業~(当記事)
- 業種別:税務調査対応(その4)~小売業・飲食業(現金商売)~
- 業種別:税務調査対応(その5)~国際取引~
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