税務調査の実態(その2)~帳簿調査~

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
公開日:2017年6月4日

調査官が税務調査として対象会社に臨戸し、代表者などにその会社の事業概況についてのヒアリングを終えると、いよいよ税務調査の本丸ともいえる「帳簿調査」に取り掛かることとなります。

税務調査では、「請求書」や「契約書」などの会計的に処理される具体的な数値が記載された書類より、それより更に真実の事実関係を示す資料として信ぴょう性のある「原始資料」の把握に努めます。

税務調査は性悪説の立場で行われますので、「請求書」や「契約書」には不正の手が加えられ、改ざんされているかもしれないと考えるからです。

「取引」が実現するまでに至る過程で作成される様々な関係資料を川の流れで例えると、「契約書」や「請求書」はもっとも下流で作成される書類となります。

原始資料」は、改ざんが行われる蓋然(がいぜん)性が低いと想定される程度の上流にまでさかのぼった流域で作成される書類のイメージです。

以上のことを踏まえると、帳簿調査とはすなわち、「原始資料」と「会計帳簿」との照合作業であるといえます。

原始資料」と「会計帳簿」の不整合が確認されると、その取引についての真実の全体像を洗い出し、本来あるべき税務処理を当てはめることとなります。

通常の「帳簿調査」を行う中で、納税者が「原始資料」を隠し持ち、その提示を拒んでいると調査官が判断すれば、事務所内のデスク、キャビネット、パソコンの中などの「現況調査」を実施することになります。

また、調査会社の「帳簿調査」だけでは、不信感がぬぐえない取引があれば、調査官はその取引先に「反面調査」を実施して真の事実関係の解明に努めます。

真の事実関係がにわかに確認できない場合は、それを効率的・機動的に解明するためのなさまざまな調査手法を用いて、真実にアプローチしていきます。

真の事実関係を解明するうえで意識するのは、5W1H+M(Money)です

特に「人」、「物」、「金」の流れに着目した取引実態の解明がなされます。

 

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