税務調査で指摘される主な否認項目(その4)~人件費~

渡邊の写真
渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
公開日:2017年6月20日

「人件費」は税務調査の中でも大きなテーマのひとつです。

通常の税務調査は、源泉所得税に関する調査についても同時に行われます。

したがって、「人件費」については損金算入性と源泉徴収の適否について複眼的に調査が進められます。

税務調査では、「人件費」に関して「役員の給与」と「使用人の給与」に分けて検討します。

(1)役員の給与

役員の給与については、「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「利益連動給与」のいずれかに該当しない限り、損金不算入となります。

特に「定期同額給与」については、その該当性がよく問題として取り上げられます。

売上除外や架空外注費などの不正計算により生じた簿外資産を役員の給与として認定された場合は、その役員給与は損金不算入となります。

(2)使用人の給与

使用人の人件費は、各月ごと、各人ごとにブレイクダウンした上で、各関係資料との整合性を確認します。

一般的に次のような手法で人件費に関する調査が進められます。

  • 「源泉所得税の納付額」と「源泉徴収簿」の各人の源泉徴収税額の合計額との整合性
  • 「源泉徴収簿」の各人の源泉徴収が「源泉徴収税額表(甲欄・乙欄)」に記載された金額のとおりに行われているか。源泉徴収していない不審な従業員はいないか。
  • 「人件費」の計上額と「源泉徴収簿」の各人の給与支給額の合計額との整合性。「源泉徴収簿」が作成されていない不審な従業員はいないか。
  • 「人件費の各人別明細」と勤怠管理資料(タイムカードや出勤簿、残業代の計算資料、有給休暇の管理資料など)、社員名簿、配席図、シフト表、当番表、履歴書、雇用契約書などの資料等との照合・整合性確認(水増し・架空人件費の有無)
  • 給与の支払方法。振込の場合の振込口座の確認。現金支給の場合、領収書(受領書)はあるか。不審な領収書ではないか。
  • すべての従業員について市区町村に「給与支払報告書」を提出しているか。

 

​経済的利益

給与名目で支給していなくても、役員や使用人に対し経済的利益を供与すると現物給与として役員給与の損金算入制限の対象や源泉所得税の徴収対象となるケースがあります。

  • 会社の資産の無償譲渡や低廉譲渡
     例)時価100の固定資産を役員や使用人に60で売却
  • 会社の資産の無償又は低廉な対価による貸付け
     例)家賃を取らずに社宅を提供
  • 個人的債務の免除や負担の肩代わり
     例)役員や使用人に対する貸付金を放棄
  • 役員の個人的費用の付け込み
     例)業務に関連のない役員の飲食費が会社の経費になっている

 

人件費に関する否認事例

  • 架空人件費の計上
  • 親会社からの出向役員に係る給与負担金の一部が定期同額給与に該当しない
  • 未払賞与の一部が翌事業年度で支払われていない
  • 役員の給与を遡及して増額
  • 事前確定届出給与に関する届出書の金額と異なる金額を支給

新日本法規出版「業種別 税務調査のポイント・国税調査官の視点とアドバイス(渡邊崇甫著)」より

 

【関連記事】

  

≪税務調査に対応する専門チーム≫

国税の職員として税務調査に長年従事し、「税務署」だけではなく「国税局」の調査担当部局において高度な税務調査を行ってきた我々OB税理士チームは、税務調査のあらゆるパターンを経験しているため、個別の事案の特性を素早く理解し、国税当局に対する的確な対応が可能です。

【関連記事】⇒ 税務調査の種類

調査官が問題ありとする事案・取引について、正確な事実関係を一から洗い出し、その事実を基に理論(法)的な武装をすることにより国税当局との交渉が可能になります。

税務調査の立会いに専門性が求められるのは、国税当局に対し事案に応じた主張すべきポイントを的確に見出し、妥協せずしっかり主張しなければならないからです。

それは、納税者のためならず国税組織のため(=課税の公平の実現)にもつながることなのです。

【関連記事】 ↓

税務調査に関する不安があれば、元調査官であるOB税理士だけで構成された我々「税務調査対策」専門チームにお問い合わせください。

プロ集団として調査の状況に応じた高度なサポートを全国に提供しています。

 国税局OB税理士による「税務調査対策」専門チーム 

私たちのチームが、税務調査に対して、どのようにして対策・対応するか、こちらのページをぜひご覧ください。

 国税OBが立ち会う税務調査

 料金表

 

全国対応・緊急案件対応

神戸を中心に大阪、東京、名古屋に国税OB税理士を配置しています。

地域によっては遠距離移動を伴いますが、全国の税務調査に対応します。

また、調査官が突然、無通知でやってきた場合や既に調査が始まっている場合などの緊急案件にも年中無休で対応しています。とりあえずご一報ください。

税務調査の立会いは
年中無休、土日祝対応
緊急案件OK

渡邊の写真
元国税調査官の税理士:渡邊 崇甫
  • 税務署から税務調査に関する連絡があった
  • 調査官が突然、無通知でやってきた
  • 既に調査が始まっている場合

いますぐご連絡ください

  • 税務署から税務調査に関する連絡があった
  • 調査官が突然、無通知でやってきた
  • 既に調査が始まっている場合

お気軽にお問合せください

元国税の税理士だから
税務調査対策が万全

専門性の高い国税職員経験を
活かした万全な対策。