税務調査で指摘される主な否認項目(その4)~人件費~
「人件費」は税務調査の中でも大きなテーマのひとつです。
通常の税務調査は、源泉所得税に関する調査についても同時に行われます。
したがって、「人件費」については損金算入性と源泉徴収の適否について複眼的に調査が進められます。
税務調査では、「人件費」に関して「役員の給与」と「使用人の給与」に分けて検討します。
(1)役員の給与
役員の給与については、「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「利益連動給与」のいずれかに該当しない限り、損金不算入となります。
特に「定期同額給与」については、その該当性がよく問題として取り上げられます。
売上除外や架空外注費などの不正計算により生じた簿外資産を役員の給与として認定された場合は、その役員給与は損金不算入となります。
(2)使用人の給与
使用人の人件費は、各月ごと、各人ごとにブレイクダウンした上で、各関係資料との整合性を確認します。
一般的に次のような手法で人件費に関する調査が進められます。
- 「源泉所得税の納付額」と「源泉徴収簿」の各人の源泉徴収税額の合計額との整合性
- 「源泉徴収簿」の各人の源泉徴収が「源泉徴収税額表(甲欄・乙欄)」に記載された金額のとおりに行われているか。源泉徴収していない不審な従業員はいないか。
- 「人件費」の計上額と「源泉徴収簿」の各人の給与支給額の合計額との整合性。「源泉徴収簿」が作成されていない不審な従業員はいないか。
- 「人件費の各人別明細」と勤怠管理資料(タイムカードや出勤簿、残業代の計算資料、有給休暇の管理資料など)、社員名簿、配席図、シフト表、当番表、履歴書、雇用契約書などの資料等との照合・整合性確認(水増し・架空人件費の有無)
- 給与の支払方法。振込の場合の振込口座の確認。現金支給の場合、領収書(受領書)はあるか。不審な領収書ではないか。
- すべての従業員について市区町村に「給与支払報告書」を提出しているか。
経済的利益
給与名目で支給していなくても、役員や使用人に対し経済的利益を供与すると現物給与として役員給与の損金算入制限の対象や源泉所得税の徴収対象となるケースがあります。
- 会社の資産の無償譲渡や低廉譲渡
例)時価100の固定資産を役員や使用人に60で売却 - 会社の資産の無償又は低廉な対価による貸付け
例)家賃を取らずに社宅を提供 - 個人的債務の免除や負担の肩代わり
例)役員や使用人に対する貸付金を放棄 - 役員の個人的費用の付け込み
例)業務に関連のない役員の飲食費が会社の経費になっている
人件費に関する否認事例
- 架空人件費の計上
- 親会社からの出向役員に係る給与負担金の一部が定期同額給与に該当しない
- 未払賞与の一部が翌事業年度で支払われていない
- 役員の給与を遡及して増額
- 事前確定届出給与に関する届出書の金額と異なる金額を支給
新日本法規出版「業種別 税務調査のポイント・国税調査官の視点とアドバイス(渡邊崇甫著)」より
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