税金の計算は「所得金額×税率」により計算されます。
この所得金額は「売上-経費」です。
したがって、税務調査がはじまると、基本的な方針として「売上」と「経費」の金額をそれぞれ計算することとになります。
帳簿を全くつけいていなくて、「売上」や「経費」について、実際の数字がわからないケースでは、推計課税という手法がとられます。
本来、「実額」に基づいた所得金額や税額の計算がなされるべきですが、帳簿書類の不存在、記帳の不備、税務調査に対する非協力などによって「実額」が把握し得ないケースにおいて、それを理由に課税庁が課税を放棄することは、課税の公平の観点から許されるべきことではありません。このようなケースにおいては推計課税を行使せざるを得ないこととなります。
税法も課税庁に推計課税による課税権の行使を許容しています(法人税法131条、所得税法156条)
具体的な話をしますと、一般に推計課税の進め方は、「損益面」と「財産面」の両面から計算を行います。
それに加えて、「準備調査」の段階で把握している内観調査、外観調査等の情報を合わせて総合的に妥当と考えられる数値を確定させます。
【関連記事】 ⇒ 「損益面(PL面)からの調査」と「財産面(BS面)からの調査」
1 「損益面」からの所得計算
まず、損益面からの調査ですが、その事業を行う上で主な仕入れ先(原価の調達先)を特定します。
例えば、飲食店であれば主な食材の仕入れ先、居酒屋であればビールの仕入れ先、美容院であればシャンプーやヘアカラー原液の仕入れ先などです。
これは、調査先の事業形態を検証しながら個別に判断します。
同じ業種でも何を主な仕入れとしてとらえるのかは異なるケースもあります。
調査事案ごとに調査官が知恵を絞って検証することになります。
主な仕入れ先を特定できれば、その仕入先に反面調査を実施し、過去の年度の取引額を把握します。
その取引額(仕入金額)を業界標準となる原価率で割戻し、売上金額を確定させます。
確定した売上金額に業界標準の経費率などを乗じて経費の金額を算出すれば、売上ー経費により所得金額が算定されます。
2 「財産面」からの所得計算
財産面からの調査では、過去の個人的な資産の増加状況、生活費、事業以外の収入(臨時収入など)金額などを分析して所得金額を計算します。
この手法は、「売上」から「経費」を引いた後の「所得金額」を直接導き出します。
所得金額=財産(預金の残高など)の増加額+生活費-事業以外の収入
という算式に基づき、算式を構成する各要素について金額を算定し、所得金額を計算します。
【関連記事】 ⇒ 売上除外した資金を借名口座にプールしていた事例(BS面から展開する税務調査)
3 「準備調査」の情報からの検討
準備調査からの情報からの検討として、準備調査の段階で行われた外観調査や内観調査で把握した、客の入り具合、平均単価などを考慮に入れて、およその売上規模や所得規模を想定します。
【関連記事】 ⇒ 準備調査(その4) ~ 外観調査・内観調査 ~
4 最終的な判断
最終的に総合判断となりますが、当然のことながら、
「損益面」から算出した所得=「財産面」から算出した所得=準備調査における想定額
とはなりません。
それぞれ違うアプローチなので金額が全く一致することはありません。
ただ、多くの場合、それぞれが全くかけ離れた金額になることもありません。
これら3つのアプローチを総合的に判断して、妥当と考えられる所得金額を算定します。
だた、税務署側の判断基準としては、「真面目に計算して確定申告している納税者」が「いい加減に申告した方が得じゃないか」と思うことがないように、帳簿をつけずに適当に申告している納税者の所得金額の計算は「厳しめ」(採用する原価率、経費率は税務署が採用する数値であり、ここに税務署のさじ加減が介入する余地がある)に算定する傾向が明らかにあります。
(補足)
税務調査に立ち会い、税務署側と正当に交渉するためには、税理士は少なくとも「損益面」のアプローチの対案作成、「財産面」のアプローチを独自算定するノウハウや経験が必要です。
調査官と同じことをできなければ、調査プロセスの妥当性を評価することはできません。
税務署が採用する原価率、経費率などの妥当性の弱さを指摘するまでの正当な対案を作成できるかどうかが税務調査の攻防のポイントです。
それができない税理士は、残念ながら現金商売の調査立会をするには力不足といえます。
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【関連記事】⇒ 税務調査の種類
調査官が指摘する問題点について、正確な事実関係を一から洗い出し、その事実を基に理論(法)的な武装をすることにより国税当局との交渉が可能になります。
税務調査の立会いに専門性が求められるのは、国税当局に対し事案に応じた主張すべきポイントを的確に見出し、妥協せずしっかり主張しなければならないからです。
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