バラエティ番組に潜む課税関係

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
公開日:2016年7月8日

忙しい日は、たまに自宅から弁当を持参し、事務所で昼食をとったりします。

昨日はまさにそのパターンで、バタバタしながらなんとか午前の仕事が落ち着き、やっと遅い昼食にありつきました。

事務机に弁当を広げ、パソコン画面でユーチューブ動画を見ながら楽しいひと時・・・・

少し前に放映された「探偵ナイトスクープ」という番組を見ました。

お笑い芸人の探偵が、視聴者から寄せられた依頼をその依頼者と共に調査し、その過程のVTRを流す番組です。

依頼は、飲食店の経営者からのもので、その母親が店番をしているときに依頼者が仕込んだ客用の「カレー」を食べていないかどうか確認してほしいとの内容でした。(笑)

仕込んだカレーの量と販売したカレーの量と鍋に残った残りのカレーの量が整合しないらしいです。

母親に「カレー食べた?」と何回聞いても「食べてない」と答えるそうです。

隠しカメラで母親が店番をしている状況を撮ったところ、なんと3人前のカレーを食べていたという結末でした。最後に母が謝罪してエンドというもの。

「これ・・・完全に『自家消費』ですよね!」

一緒に見ていた当事務所の税理士補助スタッフが、VTRで母親がカレーを食べた瞬間に叫びました。

確かにそうなのです。これは「自家消費」に該当します。

お店の在庫を自家用に消費した場合、税務上、それに対応する売上を計上しなければならないことになります。これを「自家消費」といいます。

お母さんが食べたカレーの材料は、そのお店の必要経費になっているはずですので、そのカレーはプライベートのおかずではなく、お店の在庫になります。

したがって、1皿800円で販売しているカレーをお母さんが3人前食べたとした場合、お店は2,400円の売上を計上しなければならないこととなります。

それをしていなければ、税務上、1年間のトータルでいくら、5年間のトータルでいくら・・・という計算により売上の計上漏れが認定され追徴課税がなされます。

おもしろおかしく製作されたVTRですが、視聴者の中には当然、税務職員もいるはずです。

そのお店の次回の税務調査で「自家消費」は必ず指摘されることとなるでしょう・・・・

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元国税調査官の税理士:渡邊 崇甫
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