「税務署内の組織」と「調査官の行動原理」
1 税務署内の組織
税務行政の窓口業務を担うのが「税務署」です。その上級官庁である「国税庁」や「国税局」の職員が納税者に直接会うことは基本的にはありません(国税局が担当(実施)する一部の特別な税務調査を除きます。)。
したがって、「税務調査」についても基本的には「税務署」の職員が行うこととなります。
その税務署で実際に税務調査を担当する部署が「法人課税部門」、「個人課税部門」、「資産課税部門」です。
- 法人課税部門:法人に対する税務調査(法人税及び消費税)
- 資産課税部門:相続税、贈与税の税務調査
- 個人課税部門:個人事業者に対する税務調査(所得税及び消費税)
その各部門は、下図のイメージ図のとおり、第一部門~第〇部門(税務署の規模に応じて〇の数は異なります。)及び特別国税調査官、国際税務専門官などで構成されています。
網掛けの部署が税務調査を担当します。(第一部門は管理部門ですので税務調査を担当するのは第二部門以下となります。)
第一部門~第〇部門には、それぞれトップに「統括官」が配置され、その下に配属された「上席」、「調査官」、「事務官」が税務調査を実際に行っています。
- 統括官:正式な官職名は「統括国税調査官」、40歳代半ば~の管理職
- 上席:正式な官職名は「上席国税調査官」、30歳代半ば~のベテラン職員
- 調査官:正式な官職名は「国税調査官」、20歳歳代半ば~の若手・中堅職員
- 事務官:正式な官職名は「財務事務官」、~20歳歳代半ばの新任職員
「上席」、「調査官」、「事務官」は2~3人が一組となって税務調査を実施します。調査ごとに組み合わせが変わります。ベテラン職員は1人で調査に行うこともあります。
例えば上の図の丸囲いように、上席と事務官がペアで調査を担当するようなイメージです。
一般的に午前10:00~午後4:00まで現場で調査を行い、午後5:00前に帰署し、統括官(ボス)にその日の調査の内容を報告します。この報告を「復命(ふくめい)」といいます。
2 調査官の行動原理
調査担当者は、統括官に「こんな問題点を把握しました!」と自分の仕事ぶりをアピールしたいと考えます。
その仕事ぶりが人事評価に直結するからです。
その評価される具体的な仕事ぶりとは、不正取引(仮装隠ぺい行為)や大きな金額の非違の把握です。
ですから、調査担当者は、日々、統括官に自分自身の仕事ぶりをアピールしたい気持ちに支配されながら調査をしているわけで、それ故に・・・
- 調査現場で把握された問題点を無理やり不正取引と認定しようとしたり
- グレーゾーンの取引は黒と認定しようとします
納税者有利に判断すればいいものを、内向きな動機により納税者不利な結果を求める傾向があります。
【関連記事】 ⇒ 税務調査への対応(その1)~税務調査に精通した税理士の立会い~
国税組織の大部分の職員は外回りの税務調査を担当しています。
いわば、税務職員は商社の「営業マン」のような存在です。商談を次々に成功させる営業マンが商社の組織内で評価されるように、国税組織では税務調査により多額の非違や不正取引を把握して帰って来る職員が評価されます。
人事評価だけではなく、税務調査で大きな不正取引を見つける調査官は組織内で一目置かれる存在となります。
調査官もサラリーマンですから、組織内の評価を気にする内向きな思考回路がどうしても根付いてしまうわけです・・・。
【関連記事】 ⇒ 税務署の人事評価基準 ~自然発生的なノルマ意識~
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【関連記事】⇒ 税務調査の種類
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