税務職員はストレスのかたまり
一昨日、学生さんを対象とした税務講座の講師をさせて頂きました。
「会計と税務」というテーマで、学校ではなかなか学ぶ機会のない、決算で確定した会社の「利益」から法人税の「所得」を計算するいわゆる税務調整について、その主な調整項目に関する概略的な話をさせて頂きました。
講義がひととおり終わり、講義の内容にこだわらない「税務」に関する質問を受け付けたところ、私がOB税理士であることを冒頭の講師紹介で知らされていたためか・・・
・ 「税務職員になりたいと思っているが具体的にどんな仕事をするのか?」
・ 「実際の税務調査とはどんなことをするのか?」
・ 「将来、税理士になるには税務職員として経験を積んだ方がいいか?」
など、税務職員の職務内容やキャリア形成上の利点についての質問が多くなされました。税務職への関心の高さを感じ、OB税理士として嬉しく感じました。
以下、それらの質問への回答として話した税務職員の具体的な職務イメージを紹介します。
まず、税務職員になるには「国税専門官採用試験」を受けることになります。それに合格すれば晴れて税務職員としてのキャリアをスタートすることができます。
一言でいうと、税務職員は非常に「ストレス」が溜まる仕事をしています。
他の公務員とは比較にならないほどのストレスを負わされます。
それは、「税務調査」によるストレスにほかなりません。
税務職員の仕事のメインは「税務調査」です。昼間に税務署に行けば分かると思いますが、内部事務の一部の職員を除いて署内にはほとんど職員がいません。
ほとんどの職員が税務調査に出ているからです。
○ ストレス原因 その1 対外的ストレス
・ 税務調査を受ける会社が税務調査を恐れるように、調査官も調査が怖いものです。それはとりもなおさず現場トラブルが多いからです。利害関係が相反する相手の懐に飛び込むわけですから心中穏やかでいられるわけがありません。どんな社長だろう?税理士は協力的だろうか?調査官も人間ですから税務調査は怖いものです。とくに調査着手前まではあれこれ考え不安が晴れることはありません。
・ 調査官は現場での数字を上げること(=大きな金額の指摘をすること)を職務上、求められます。後でも述べますが営業マンが営業成績を求められるのと同じイメージです。調査が始まって、2日、3日経過しても問題点が把握できなければ、精神的にかなり追い詰められます(笑)。いやいや、本人にとっては本当に深刻な問題なのです・・・。
・ 問題事項が把握されたらその各項目についてその内容を納税者(調査先)に説明し、納得させなければなりません。手ごわい税理士がいれば、ハードな交渉を余儀なくされます。グレーな指摘なら、大議論になることもあります。やり甲斐はあるのですが、結構つらい業務です。
○ ストレス原因 その2 対内的ストレス
・ 調査官は税務署に戻るとその日の税務調査の結果を上司である統括官に報告します。現場で収集した資料を見せて、調査内容を報告するわけです。それを聞いた統括官は、「ああせよ、こうせよ」と細かい指示を出します。これが、非常にうっとうしいわけです。調査官が問題なしと報告をした項目についてもその資料を見た統括官が、こういう問題が想定されるため、もう一度調査をやり直せなどと指示されるのです。現場では問題なしですねと矛をおさめた項目を再調査するとなると納税者の反感を招き、対外的なストレスがが生じます。まさに前門の虎後門の狼です・・・
・ また、調査事績に対する評価も対内的ストレスのひとつです。いわゆる営業マンの営業成績が棒グラフで掲示されているのと似たプレッシャーです。調査官の調査事績、すなわち何件調査を実施して、金額的にいくらの問題点を見つけたか、そのうち不正発見は何件でいくらかといった数値が内部で暗黙的に知れ渡るからです。調査官は休む間もなく常に数字に追われています。
とまぁ、ストレスについて書きましたが、これらは主に未熟な修業中の小僧調査官に当てはまるストレスです。
調査経験を積み、実力がついて来れば、だんだんと上記のストレス原因がストレス原因でなくなります。
相手先との対応にも慣れてうまくトラブルを回避できるようになり、数字を気にしなくても自ずと結果を出すことができ、内部から信頼を得られ上司からもいちいち細かい指示を受けることもなくなるからです。
経験を積むごとに組織内での居心地が良くなってきます。
現場に強い調査官は、税務署内で一目置かれます。
そこまで現場力を高めることができる職員にとっては、税務職はまさに天職といえます。
そんな調査官が会社に来た日にゃ、たまったもんじゃありませんが・・・・(笑)
税務調査をはじめ、組織運営を含めた税務行政の現場経験は、いずれ組織を飛び出し税務の世界で活躍していく上で貴重な財産になるのは間違いありません。
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税務調査の立会いに専門性が求められるのは、国税当局に対し事案に応じた主張すべきポイントを的確に見出し、妥協せずしっかり主張しなければならないからです。
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