「重加算税」がかかるケース(個人事業主の調査)

税務調査で、「隠べい又は仮装による不正経理」が指摘された場合、「重加算税」が課されますが、法人税・所得税・相続税・消費税などの税の種類によって「重加算税」適用されるケースが違うと聞きます。

個人事業主(所得税)の調査の場合、この「隠べい又は仮装による不正経理」とは、具体的にどのようなケースが該当するのでしょうか?

おっしゃるとおり、税務調査で、「隠べい又は仮装による不正経理」が指摘された場合、「重加算税」が課されます。

重加算税は、追徴される税額(本税)×35%で計算される加算税の中で最も重いペナルティです。(無申告の場合は40%となります。)

 重加算税=追徴される税額(本税)×35%

個人事業主に税務調査が入った場合、具体的にどのようなケースに該当すれば「重加算税」がかかるのでしょう?

個人事業主は、「所得税」の納税義務者なので、ここでは、「所得税」に「重加算税」がかかるケースを見ていきます。

国税庁が公表している「申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて」(事務運営指針)にそれが記載されています。

「申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて」(事務運営指針)

この「申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて」(事務運営指針)を要約すると、「重加算税」がかかるケースの例示(=「隠ぺい又は仮装による不正経理」とみなされるもの)として次のことを挙げています。

  • 二重帳簿の作成(「本当の帳簿」と「ウソの帳簿」を作っていること)
  • 帳簿書類※の破棄(捨てること)又は隠匿(隠すこと)
  • 次の方法により仮装をしている
    ・帳簿書類※の改ざん、偽造、変造
    ・帳簿書類※への虚偽記載
    ・相手方との通謀による虚偽又は架空の契約書、請求書、領収書の作成
    ・​帳簿書類※の意図的な集計違算(合計額を間違えること)
  • 取引先に虚偽の帳簿書類※を作成させている
  • 事業の経営、売買、賃貸借などを他人名義又は架空名義で行っている
  • 株式、不動産などを他人名義又は架空名義により所有している
  • 帳簿から除外した売上代金などで他人名義又は架空名義の預貯金その他の資産を取得している
  • 虚偽の証明書などを作成し、それにより課税の特例などの適用を受けている
  • 源泉徴収票、支払調書などを改ざん、虚偽記載すること
  • 調査の際に虚偽の答弁を行ったり、取引相手先などに虚偽の答弁を行わせるなどの事実があった場合、それらの事実を総合的に判断して申告時における隠ぺい又は仮装が合理的に推認できる

(注)「帳簿書類」とは以下の書類をいいます。
  帳簿、決算書類、契約書、請求書、領収書その他取引に関する書類

以上のケースに該当すれば「隠ぺい又は仮装による不正経理」とみなされ、重加算税が適用されます。これらはあくまで国税庁が公表する不正計算の代表例であり、「隠ぺい又は仮装による不正経理」があったかどうかは個々の事例により判断がなされます。

「重加算税」が適用されると「延滞税(利息)」の免除期間の適用を受けることができず、最長で過去7年間の利息を納めることとなり、多額の追徴税金を負担しなければなりません。

参考記事 ⇒ 税務調査が行われた場合の「延滞税」の計算

重加算税は最も重いペナルティです。

それを回避するためには日ごろから適正な帳簿を作成すること、そして税務調査の場面では税務調査に精通した専門税理士のサポートが必要です。

 

関連記事はこちら↓
 「重加算税」がかかるケース(法人の調査)
 「重加算税」がかかるケース(個人事業主の調査)(当記事)
 「重加算税」がかかるケース(相続税・贈与税の調査)
 「重加算税」がかかるケース(消費税)

「加算税」、「延滞税」などの附帯税の概要についてはこちらをご覧ください
 附帯税(加算税・延滞税)の種類と概要について

 

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このQ&Aの回答者

渡邊 崇甫税理士(元国税局調査官)
これまでの経歴
  • 国税局 調査第一部 国際調査課
  • 国税局 調査第一部 特別国税調査官
  • 国税不服審判所(本部)
著書

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