国際税務「国外関連者に対する寄附金」について

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
公開日:2021年7月6日

長年、国税局の職員として大規模法人の税務調査に従事してきました。

私が担当してきたのは、主に国際税務分野に関する税務調査です。

国際税務でもっとも問題になるテーマが、「国外関連者に対する寄附金」です。

 

1 国外関連者とは

「国外関連者」とは、以下に当てはまる外国法人のことを言います。

(1)    内国法人によって経営をコントロールすることが可能な外国法人
  例)内国法人に発行済株式の50%以上を保有される外国法人
    (海外子会社のイメージ)

(2)     内国法人の経営をコントロールすることが可能な外国法人
  例)内国法人の発行済株式の50%以上を保有する外国法人
    (海外親会社のイメージ)

「国外関連者」の詳細については ⇒ 国外関連者とは

内国法人が発行済株式の50%以上保有している海外子会社は、上記(1)により国外関連者に該当します。

税務調査においてもっとも問題になる「国外関連者に対する寄附金」は、この海外子会社に対する寄附金です。

 

2 国外関連者に対する寄附金とは

税務調査の現場では、税務調査の対象法人(以下「調査法人」といいます。)が、その国外関連者に対して何らの経済的利益を無償で供与するような事実関係があれば、「国外関連者に対する寄附金」として認定されます。

財政基盤の弱い国外関連者(特に海外子会社)の赤字を減らすために経済的な利益を供与して財務支援するというのが基本的な構図です。

 

3 国外関連者に対する寄附金の類型

税務調査の現場においてよく問題となるのが、次のようなケースです。それは、すなわち「国外関連者に対する寄附金」の認定原因となります。

(1) 過少申告加算税の賦課対象となるケース

本来、海外子会社が負担すべき費用を調査法人が負担することにより、経済的利益を供与している

(例)海外子会社への出向社員の給与負担

【関連記事】 ⇒ 海外子会社に出向した社員の給与負担(国外関連者に対する寄附金)

 

(2) 重加算税の賦課対象となるケース

取引を仮装することによりなされる海外子会社の財務支援のための資金援助

(例)架空の業務委託契約を締結することにより、手数料名目で資金を送金し財務支援

【関連記事】 ⇒ 業務委託費に仮装した海外子会社への財務支援(国外関連者に対する寄附金)

 

4 国外関連者に対する寄附金と認定された場合の課税関係

国外関連者に対する寄附金は、その全額が損金不算入となります。(措法66の4③)

「国外関連者に対する寄附金」が税務調査で指摘される場合、指摘対象となった取引は、会計上は調査法人の費用として処理されているのが一般的です。

その場合、「国外関連者に対する寄附金」に該当すると指摘された金額を申告調整により所得金額に全額加算(確定申告書別表4にて流出加算)します。

(例) 海外子会社へ出向した社員給与の全額を親会社である調査法人が負担していた。(寄附金認定額を○○とする)

・会計処理
 (借方)給与 ○○   (借方)預金等 ○○

・税務処理
 (借方)国外関連者寄附金 ○○ (借方)預貯金 ○○
  法人税申告書/別表4にて、所得加算○○(流出加算)

 

 

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元国税調査官の税理士:渡邊 崇甫
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