1 国税局が行う税務調査
国税組織の事務分掌については、一般に「税務署」は税務調査を行い、「国税局」は税務行政に関する運営企画を行っていますが、「国税局」内にも税務調査を行う現業部隊が組織されています。
それが、「査察部」、「調査部」、「(課税部)資料調査課」です。これらの部署は、それぞれ「巨額脱税事案」、「大規模法人への調査」、「大口不正計算が見込まれる事案」など、税務署では対応が困難な事案の税務調査を取り扱っています。
- 国税局・「査察部」: 巨額脱税事案
- 国税局・「調査部」: 大規模法人への調査
- 国税局・「課税部(資料調査課)」: 納税大口不正計算が見込まれる事案
2 国税局「査察部」が行う調査について
国税局の調査といえば「マルサ」をイメージする方が多いのではないでしょうか。
「査察部」とは、まさに「マルサ」のことです。
この「マルサ」は、刑事告発を視野に入れた税務調査を行い、悪質な脱税者に対する刑事責任の追及を行っています。
大口・悪質な脱税被疑者(脱税が疑われる納税者)に対して調査に着手する前に何年もかけて 内偵調査(注) を進め、およその脱税容疑を固めた上で裁判所から捜査令状を取得します。その捜査令状に基づく強制調査が「マルサ」の調査です。
(注) 内偵調査:脱税被疑者の経営する事業やその取引先、金融機関、被疑者自身の身辺(親族、関係者など)を対象に秘密裡に調査をして情報を収集こと。事案の実態に応じて、張り込みや尾行をすることもある。目的は、脱税規模の把握、脱税により生じた簿外資金(裏金)の行方(ゆくえ)を追跡すること。内偵調査により脱税容疑を固め、裁判所に捜査令状の交付を申し立てる。それにより強制調査が可能となる。
当然、納税者(被疑者)に調査開始の事前通知がなされるわけはなく、ある日突然「マルサ」はやって来て脱税容疑を固めるための資料を押収します。
会社、自宅、銀行、愛人宅などおよそ納税者(容疑者)と関係のある場所が一斉に捜査され、有無を言わせず関係書類をダンボールに入れて持ち去ります。
令状があるのでそれを拒否することはできません。
初動捜査のねらいは簿外資金(裏金)の「たまり」の把握(発見)です。
簿外資金(裏金)そのもの(現金)や有価証券、金などの現物資産や、仮名借名の預金通帳などもよく現場で発見されます。
壁の中や天井裏、庭の土の中から「たまり」が発見されることもあるようです。
この「たまり」の発見こそがその事件の成否を左右します。なぜなら、「たまり」は何よりも脱税の証拠になるからです。
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