税務調査の実態(その5)~現物確認調査~

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
公開日:2017年6月9日

税務調査では「帳簿調査」がメインとなりますが、場合によっては帳簿に記載された資産の現物を確認することがあります。

例えば、製造業を営む会社に税務調査が行われた場合に、工場内にある機械などの現物を固定資産台帳と照合し、実際にあるかどうか、現物はどのようなものか、使用状況はどうか・・・などを確認します。

このような会社の資産の現物を確認する調査を文字通り「現物確認調査」といいます。

現物確認調査」から発展する問題は様々ですが、調査官が特に念頭に置いているのは「簿外資産」の把握です。

簿外資産は、簿外資金により取得されたものと推認され、簿外資金は不正経理により捻出されたものと考えられます。

簿外資産を表に出せばその資金出所を問われることから、簿外資金で資産を取得した場合は表に出さずに簿外で使用する傾向があるといえます。

すなわち簿外資産の把握は、不正経理(売上除外や架空仕入れなど)の発見につながる可能性が高いことから、調査官は現物確認調査を実施し、まずは簿外資産を把握し、ひいては不正経理を発見することに努めようとするわけです。

不正経理に直結しなくても、例えば、除却したはずの資産が簿外で残っていた場合は、除却損の計上が問題となり(有姿除却のケースもありますが・・・)、また、研究開発費(の計上)により取得された試作品(パイロット機)が簿外になっているケースでは税務上、当該研究開発費を固定資産の取得価額に振り替える処理がなされることになります。

これらの問題の把握は、現物確認調査により可能となります。

腕利きの調査官は現場を見ることを好みます。現場には調査官にとってたくさんの宝が転がっているからです(笑)

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