業務用のメールは税務調査の対象となります。
プライベートのメールは調査の対象外です。
ただし、プライベートのメールと業務用のメールが混在していて、それぞれ区分するのが困難な場合は、すべてのメールが調査対象とされても、特段の異を唱えることはできません。
調査官は業務上知り得た情報を他に漏らしてはいけないという守秘義務が課されているため、調査で見聞きした納税者の私的な情報が漏洩することはありません。
なお、税理士がいてもいなくても、上記の扱いに影響はありません。
(参考)
税務調査で調査対象となるのは、総勘定元帳、その他の帳簿(現金出納帳、売掛帳、買掛帳など)、証ひょう類(領収書、請求書など)が一般的です。
調査現場では、調査官に一定の裁量権が付与されているため、基本的には、調査官の指示する書類等の提出は必要です。
では、無条件に調査官の指示に従わなければならないかというと決してそうではなく、調査官が行使しうる裁量権の範囲は、(当然ながら)常識的な範囲までとなります。
調査官が調査対象物として提出・提示を求めるものが、税務調査を遂行する上で必要であると常識的に考えられる範囲内では、その指示に従うべきでしょう。
その常識的な調査官の指示事項に従わなければ、法律上、罰則(1年以下の懲役又は五十万円以下の罰金)が科されることになります。(国税通則法128①二)
裏を返せば、納税者は調査官の指示に従う義務を負っていることになります。
この義務を「受忍義務」といいます。
前置きが長くなりましたが、上記を踏まえて考えた場合、調査官が調査対象として業務に関連するメールのやり取りの提示を求めるのは、税務調査という業務の遂行上、ごく常識的な要求であるといえます。
昨今、業務上の関係者とのコミュニケーションをメールで行うのはごく一般的です。
請求書や契約書、見積書、スケジュールなどあらゆるドキュメントのやり取りがメールで行われています。
したがって、このような業務に関するやり取りが行われているメールの確認を調査対象とすることに問題はなく、それを拒否するのは税務調査の受忍義務を放棄しているとみなされても仕方ありません。
ただし、業務に関係のない私的なメールは調査の対象外となりますので、それをきちんと説明して調査対象から除外してもらうことは可能です。
この場合、私的メールであるかそれとも業務用メールであるのかの確認をすることも、調査官の常識的な裁量権の範囲だと考えられますので、私的メールという理由で有無を言わせずに調査対象外と主張するのは適切な対応とは言えません。
また、私的メールと業務用メールが同じメールアドレスで使用されている場合など、メールのメッセージボックスなどに私的メールと業務用メールが混在している場合は、そのメールボックス全体が調査対象とされても、それが常識を逸脱する行為とはいえません。
仮に調査官に私的メールが閲覧されたとしても、調査官には税務調査で知り得た情報を外部に漏洩することは法律で禁止されてるため(国税通則法127他)、それが外部に漏れることはありません。(それが発覚すれば処罰の対象となります)
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