外国法人に原材料を輸出した際に一部費用の負担をした場合における課税関係

当社は、産業用機械の製造を営む会社です。

海外の協力会社(資本関係なし)から一部の部品を輸入していますが、その原材料の現地調達ができなくなったため、当社が商社に仲介手配をして日本から輸出することとなりました。

この原材料輸出の際に梱包形態の変更が必要となりますが、その梱包形態の変更にかかる費用を当社が負担し、協力会社には請求しない予定です。

このような場合、税務上、移転価格や海外寄附金の問題などが生じないかと社内で意見が出ています。

どのように考えるべきでしょうか。

ご質問の内容を見るかぎり、少なくとも移転価格の問題は生じないと考えられます。

移転価格税制は、「国外関連取引」のみをその適用対象としています。

そして、「国外関連取引」とは、内国法人と国外関連者との間でなされる取引をいい、また、国外関連者とは一般的に50%以上の資本関係がある外国法人をいいます。

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海外の協力会社(以下「協力会社」)とは資本関係がないということですので、協力会社の役員の過半が貴社の役員や社員から派遣しているなど、協力会社の経営を貴社がコントロールできる特別な事情がない限り、協力会社は貴社の国外関連者に該当しません。

したがって、貴社と協力会社との間で行われる取引は国外関連取引には該当しないものと考えられることから、移転価格税制の対象となることはありません。

仮に移転価格税制の対象である場合、貴社は協力会社に原材料を輸出し、協力会社が当該原材料を使用して製造した部品を輸入することとなるため、当該原材料の輸出に係る価格だけではなく、輸出及び輸入にかかる価格を総合して独立企業間価格とかい離していないかを判断することとなります。

例えば、原材料を無償支給することにより、製造依頼をする取引形態も多くみられるます。この場合、原材料の無償支給だけをとらまえて移転価格税制を発動することはありません。無償支給された原材料を使用して製造された製品を輸入する際の価格に対して、無償支給した原材料費を加味したところで独立企業間価格に照らして適正かどうかが検討されます。

 

次に協力会社に対して寄附金認定がされないかどうかについて検討します。

寄附金認定がされるのは、「贈与」の事実が認定された場合です。

贈与」とは対価性がない一方的な経済的利益の供与をいいます。

ご質問のケースでは、協力会社と協議の結果、原材料の本体価格は協力会社が負担し、再梱包費用は貴社が負担することになったということであり、再梱包費を協力会社が負担するべきであるという認定を第三者(税務当局など)がすることはできません。協力会社が製造する部品の調達コストとして、原材料の本体価額及びその他製造コストは協力会社が負担し、原材料の再梱包費は貴社が負担するという取引形態を選んだだけのことなので、そこに贈与の要素はなく寄附金認定はできません。

また、そもそも原材料の輸出とその原材料を使用して製造された部品を輸入している取引形態から、当該輸出と輸入は一体性のある取引であるため、寄附金があったかどうかは、上述と同様に原材料の輸出価格と部品の輸入価格とを総合的に判断すべきといえます。

例えば、再梱包費を貴社が負担しているところ、協力会社からの部品の輸入代金に当該再梱包費が含まれていた場合などは、その部分は対価性のない利益供与(=寄附金)と認定される可能性があります。

【関連記事】 ⇒ 国際税務「国外関連者に対する寄附金」について

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元国税調査官の税理士:渡邊 崇甫
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このQ&Aの回答者

渡邊 崇甫税理士(元国税局調査官)
これまでの経歴
  • 国税局 調査第一部 国際調査課
  • 国税局 調査第一部 特別国税調査官
  • 国税不服審判所(本部)
著書

元国税の税理士だから
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