査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税 制度の維持に資することを目的としています。
その目的を達成するため、偽りその他不正の行為 により故意に税を免れた納税者に対して正しい税を課すほか、捜査令状に基づく強制的権限を行使するなど犯罪捜査に準ずる方法で調査を行い、その結果に基づき検察官に告発し、公訴の提起を求めます。
したがって、一般の税務調査とくらべ、①強制調査権があること、②刑事責任を追及することにおいて違いがあるといえます。
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昨今の経済取引の広域化、国際化及びICT化により、脱税の手段・方法が複雑・巧妙化している中で、国税査察官は、経済社会情勢の変化に的確に対応し、悪質な脱税者の摘発に全力を挙げています。
査察部には、情報担当(内偵担当)と調査担当があり、その両部署が連携して悪質な脱税者の摘発に全力を尽くしています。
情報担当は、内偵調査(注)を実施し、マスコミ情報や風評、時には部外情報などから脱税していると思われる人物や会社の絞り込みを行います。
そして、緻密な情報分析や綿密な内偵調査(注)を進め、脱税の疑いが強くなれば、裁判官に対し、捜索や差押えの許可状を請求します。
(注) 内偵調査とは:脱税被疑者の経営する事業やその取引先、金融機関、被疑者自身の身辺(親族、関係者など)を対象に秘密裡に調査をして情報を収集こと。事案の実態に応じて、張り込みや尾行をすることもある。目的は、脱税規模の把握、脱税により生じた簿外資金(裏金)の行方(ゆくえ)を追跡すること。内偵調査により脱税容疑を固め、裁判所に捜査令状の交付を申し立てる。それにより強制調査が可能となる。
調査担当は、裁判官の発付した許可状に基づき、嫌疑者の居宅や会社の強制調査を行い、差し押えた証拠物件の検討や質問調査等により脱税の証拠を固め、検察官に告発します。