豊田通商の所得隠し 大規模法人に対する典型的な税務調査
5月3日の報道によると、トヨタグループの総合商社「豊田通商」が名古屋国税局・調査部の税務調査を受け、約1億円の所得隠しを指摘されたようです。このうち約3千万円は、英国子会社から受け取る債務保証料を収入に計上せず、簿外で管理していたというものでした。
「豊田通商」は、英国子会社が現地の金融機関から融資を受ける際、債務保証を行い、その対価として債務保証料を受け取ることになっていましたが、英国子会社から毎月、債務保証料の金額の報告があったにもかかわらず、それを会計に計上せずに、簿外で管理していたようです。
英国子会社の損益を改善するため、財務状況を立て直した後で、豊田通商が一括して債権を回収する予定だったとみられています。
このように、「豊田通商」のような大規模法人になると、「海外子会社に対する財務支援」が税務調査の問題点としてよく指摘されます。
今回の報道のように、海外子会社から本来受け取るべき報酬や対価などを受け取っていなければ、税務上、次の処理(税務上の仕訳)を認定されます。
(借方)未収入金(貸方)収益
簿外管理していたのであれば、仮装隠蔽を伴う不正計算とみなされ、重加算税の対象となります。
また、海外子会社から本来受け取るべき収益をあえて徴さないという事実関係があれば、寄附金の認定がなされます。税務用語でいう「国外関連者に対する寄附金」に該当するものです。
(借方)寄附金 (貸方)収益
なお、税務の取り扱い上、海外子会社に対する寄附金はその全額が損金の額に算入されない(必要経費にならない)ため、(借方)の寄附金は実際には損金不算入となり、貸借が相殺されず(貸方)収益の計上漏れに対してストレートに税金が課されることとなります。
中小企業に対する税務調査は、オーナー社長の簿外蓄財や私的流用、恣意的な利益調整などがなされていないかが調査のメインテーマとなります(具体的には売上除外や架空経費、棚卸除外など)。調査官はそれを念頭において調査が進められます。
一方、大規模法人の税務調査になると、ターゲットががらりと変わります。
大規模法人の社長が売上を除外して、それによりねん出した簿外資金を私的流用するようなことは、まずありません。
今回の報道にあったような「子会社の財務支援(特に海外子会社)」や「受注謝礼金などの機密費のねん出」、「予算管理上の利益調整」など、企業経営上の必要悪の部分がメインテーマとなります。
これには大規模法人に対する特有の調査ノウハウが必要となります。
たまに一社員による横領、キックバックが税務上の問題となりますが、これは私的流用という意味で中小企業の税務調査のメインテーマに近い類型の問題点といえます。
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