「損益面(PL面)からの調査」と「財産面(BS面)からの調査」

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
公開日:2020年10月12日

税務調査の手法に関する話です。

調査官が税務上の問題点を見つけるアプローチの仕方には、損益面(PL面)からのアプローチと 財産面(BS面)からのアプローチの2種類があります。

基本となる「損益面(PL面)からの調査」

税務調査は「税金の計算」が適正に行われているかどうかを確認することを目的としています。

この「税金の計算」は、「所得×税率」によって計算されるので、税務調査とは「所得」が正しく計算されているかどうかを確認することに他なりません。

そして「所得」とは、「売上-経費」で計算されます。これは、個人事業主も法人も同じです。「所得」=「利益」のイメージです。

したがって、結局のところ税務調査に訪れる調査官は「売上」と「経費」について、次の視点で物を考え、調査を進めます。

  • 「売上」の過少計上はないか?(売上除外、売上げの繰り延べ)
  • 「経費」の過大計上はないか?(経費の架空・水増計上、経費の先上げ計上)

これが調査における基本姿勢です。

このように「売上」と「経費」に着眼した調査を損益面(PL面)からの調査といいます。

いわゆる損益計算書(Profit&Loss Statement)の処理が正しく行われているかどうかの調査です。

簿外資金の留保形態・使途を解明する「財産面(BS面)の調査」

例えば、帳簿調査で100万円の領収書(控え)があるにもかかわらず、それが売上に計上されていないことが判明した場合、売上除外があったことが想定されます。

これがPL面の調査です。

社長が売上除外100万円を認めれば、それで売上除外100万円が確定します。

ただし、これでこの件が片付くわけではありません。

売上除外された100万円はどのようにプールされているのは、あるいはどのように使われたか・・すなわち100万円という簿外資金の留保形態や使途を解明しなければなりません。

この簿外資金の留保形態や使途を解明するのが「財産面(BS面)の調査」です。

すなわち貸借対照表(Balance Sheet)上の修正項目を認定するための調査です。

簿記でいうところの相手勘定はどう処理すべきかということを認定しなければなりません。なぜなら、相手科目をどうするかにより税務処理が変わるからです。

≪仕訳≫

(借方)??? 100万円/(貸方)売上 100万円

???にどういう勘定科目を使うべきか・・・・100万円の留保形態又は使途を解明して、その事実関係に適合する勘定科目を用いて税務上の処理を認定します。

このケースでは、事実認定により以下の勘定科目が考えられます。

  • 社長が遊興費などに費消していた場合:
     ⇒ 「役員給与」ただし損金不算入、源泉所得税の追徴も同時に認定
  • 社長への貸付金と認定する場合:
     ⇒ 「社長への貸付金」未収利息も同時に認定
  • 簿外の預金口座にプールしていた場合:
     ⇒ 「預貯金」簿外口座の受け入れ処理
      (その簿外口座の入出金のすべてを解明することになる)
  • 簿外の交際費に使われていた場合:
     ⇒ 「交際費」損金算入限度額を超える部分は損金不算入
  • 得意先等への付け届けで支出先を開示しない場合
     ⇒ 「使途秘匿金」使途秘匿金課税が併課

BS面からのアプローチする高度な調査

事案によっては、BS面の調査が主となり、PL面の調査が従となるアプローチもあります。

例えば、以下のような案件においては、所得金額の認定する際には、社長の生活状況調査を実施し、申告額(役員報酬額)を超えた蓄財や生活費の支出額を簿外資金として過少申告の所得額を認定します。これがBS面からのアプローチによる調査です。

  • 現金商売で所得を過少申告に行っていることが疑われるケース
  • 無申告者に対する税務調査
  • 「売上」は銀行振り込みで金額が判明しているが、「経費」の額が領収書を保存していないために分からないケース

上記以外にも様々な場面で活用される調査アプローチです。

【関連記事】BS面からアプローチした具体的な事例↓

売上除外した資金を借名口座にプールしていた事例(BS面から展開する税務調査)

この生活状況調査は高度な調査技術であり、ある程度調査経験を積んだ調査官でないと、きちんとしたものを作れません。

蛇足ながら付言すれば、このBS面からのアプローチ(生活状況調査)による所得計算をきちんとできる立場にいるのは、実は、税務署の調査官より調査に立ち会う税理士です。

納税者の近い立場にあり、警戒心なくヒアリングを実施し、関係資料の入手することが可能だからです。

ただし、このBS面からのアプローチは税務調査のノウハウを知らなければできません。

このBS面からのアプローチによる所得計算ができなければ、調査官主導の所得金額の認定がなされ、大きな追徴税を強いられることになります。

BS面アプローチによる対案を作れるノウハウが税務調査の立会いの現場では必ず必要となります。

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