横行する消費税の不正還付(還付詐欺)

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
公開日:2022年8月17日

消費税の輸出免税制度を悪用した不正還付が横行しています。

消費税は、事業者が、「売上先から預かった消費税額(売上代金の10%)」から「仕入先などに支払った消費税額(仕入代金や経費などの10%)」を差し引いた差額を税務署に納める仕組みになっています。

例えば、仕入10,000円(消費税1,000円・税込11,000円)、売上12,000円(消費税1,200円・税込13,200円)の商品売買が行われた場合、税務署に納める消費税額は1,200円-1,000円=200円となります。

ところで、消費税は商品が「国内」で消費される取引に対してのみ課される税金であるため、「海外」で消費される輸出取引に対して消費税は課されません。これを輸出免税といいます。(ただし、この輸出免税(=輸出売上に対する消費税課税の免除)の適用を受けるためには、輸出許可書など輸出があったことを証明する書類の保存が要件となります。)

したがって、輸出をしている事業者は、輸出免税により、「売上先(輸出先)から預かる消費税額」はゼロとなるため、「仕入先などに支払った消費税額」がそのまま全額、税務署から還付されることになります。

例えば、仕入10,000円(消費税1,000円・税込11,000円)、輸出売上12,000円(消費税免税)の場合、税務署に納める消費税額は0円-1,000円=△1,000円、すなわち1,000円の還付となります。

ここ数年来、この輸出免税制度を悪用した不正還付が横行しています。

目下、国税当局(国税局・税務署)は、その取り締まりに躍起になっています。

不正還付の手口は、以下のとおりです。

  • 高額化粧品などの架空仕入を計上する
  • それを海外に輸出したこととして架空の輸出売上を計上する
  • 実際は安価な「水」などを梱包して、輸出する(ほとんどの場合、この水は簿外仕入れ)
  • 輸出手続きの虚偽申請により、高額化粧品などを輸出したとする輸出許可書を入手する(実際は水を輸出)
  • 海外に輸出された商品(手続上は「高額化粧品」として仮装しているが、実際は「水」)は海外に居る通謀者が引き取る
  • 虚偽申請により得た輸出許可証をもとに税務署に対して消費税の還付申告をして、高額化粧品の仕入れ(架空仕入)の際に生じたとする消費税を詐取する

例えば、高額化粧品であるSKⅡ(@20,000円+消費税2,000円=税込22,000円)の架空仕入れを計上し、それを20,000円で輸出したこととして輸出手続きをするが、実際は簿外で仕入れた水(@50円)を梱包して輸出する

虚偽の輸出手続きによりSKⅡの輸出許可書を入手し、それを証拠書類として消費税2,000円の不正還付を受ける

帳簿上、同額の架空仕入と架空売上を計上するため、所得は発生せず法人税はかからない

不正還付される消費税については、帳簿上、仮払消費税の返還なのでやはり所得は生じない

このようなイメージです。

このような架空取引を大胆にも大規模で行い、数十億円にのぼる不正還付を受けていた中国人もいます。

また、このような不正還付の首謀者が、善意の輸出業者を利用する手口もあり、その悪質性は筆舌に尽くしがたいものです。

脱税ではなく国家に対する詐欺そのものです。

 

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