米国の迷走・・・保護主義に陥った税制改正(共和党案)

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
公開日:2017年1月13日

いよいよ米国でトランプ氏が大統領に就任します。

トランプ氏は米国という大国の大統領でありながら、TPPの合意を破棄するや米国の貿易不均衡を是正するといった保護主義的政策をあからさまに宣言しており、関係各国はその動向をひやひやしながら静観しています。

実は、暴走しているのはトランプ氏だけではありません。同氏が属する共和党も保護主義を是認する立場をとりつつあります。

昨日の新聞報道(2017.1.12日経・朝刊2面)によると、共和党が税制改正により、輸出取引には法人税を課さず(輸出売上額を益金に算入しない)、輸入取引には法人税を課す(輸入仕入れ額を損金に算入しない)という制度の導入を検討しているそうです。これにより、米国内で製造し輸出する企業は税務的な厚遇を受ける一方、外国から米国に商品、材料などを輸入している企業は大きな税負担を負わされることとなります。

今のところ、共和党案ということで検討をしているようですが、これが現実になれば、租税立法上の大原則である内外(投資)中立性に大きく違背することとなります。租税は企業の意思決定につき中立的であることが望まれます。国内に投資するか国外に投資するか・・・一方が有利で他方が不利であれば、企業の自由闊達な資源配分にバイアスがかかり、マクロで見た経済効率性が損なわれることになるからです。

また、この共和党案は、国際的な課税原則の逸脱とういう以前に、費用収益対応の原則という世界共通の会計原則にそぐわないものであり、それに課税を断行するとなると、世界の課税秩序に大きな影響を及ぼしかねません。

ブレグジット(英国のEU離脱)、中国の暴走にとどまらず米国の迷走・・・

なんとも先の見えない混沌とした世界情勢になったものです・・・

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元国税調査官の税理士:渡邊 崇甫
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