海外出張社員の課税関係 ~180日ルールとは?~

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
公開日:2017年11月1日

国際税務の研修講師をさせていただいたときによく受ける質問として、海外に社員を派遣した場合の180日ルールについて聞かれます。

どうも現地(外国)に180日以上滞在した場合は、日本では非居住者として扱われ、その派遣社員の所得税が生じないと考えておられる方が多いようですが、実際はそうではありません。

日本では、以下に該当する場合、非居住者として扱われ、国外で生じた所得については所得税がかからないこととなっています。

  • 日本に「生活の本拠(住所)」がなく、 かつ
  • 1年以上「住んでいる場所(居所)」がない

したがって、会社の社員が1年以上の海外勤務予定で出国した場合は、生活の本拠は海外に移り、かつ、1年以上日本に居所をもたなくなることが明らかなのでその出国の時点から非居住者として扱われることとなります。

ですから、日本における所得税の課税関係上は、180日という数字はどこにも出てきません。

では、180日ルールとはどういう場面で出てくるのかというと、(日本が租税条約を締結している)外国における課税関係において登場する概念であります。

すなわち、日本の会社の社員が海外に赴任し、外国で仕事をして給与の支給を受ける場合、基本的にその働いた国で所得が生じていることとして扱われ、その国で給与所得課税を受けることとなりますが、次の2つの要件を満たす場合は、その国における課税が免除となるのが日本が締結する多くの租税条約における取り扱いとなっています。

  • 現地での滞在日数が183日を超えない
  • その給与が現地の企業から支給されるものでない

この扱いを「短期滞在免税制度」といい、これがいわゆる180日ルールというものとなっています。

このルールは、上記の通り、現地企業が負担する給与については適用されないため、例えば、海外子会社に出向している場合において、その給与をその子会社が負担していれば適用はなく、一方、出張ベースで海外に赴き、現地で仕事をする場合については適用があると考えられます。

【参考:サービスPE】
新興国との間で締結している租税条約では、内国法人の社員が現地に183日以上滞在して現地で外部にサービスを提供する場合、その社員は当該内国法人の恒久的施設(支店のようなもの:「PE」といいます。)とみなされ、そのサービスにより得た所得について当該内国法人が現地国で課税されることがあります。

いわゆる、サービスPEと呼ばれる課税制度です。

以上の通り、出張ベースで海外に183日以上滞在すると、出張者本人の所得税ばかりか、その活動により生じた所得に対する法人税も現地で課される場合もありますので、出張先の国との租税条約をきちんと理解し、課税関係を認識したうえで出張プランを立てる必要があります。

 

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