国際源泉課税 ~アップル社の日本法人が大型課税!~ 「役務提供の対価」と「ノウハウの使用料(ロイヤルティ)」

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
公開日:2016年9月18日

つい2週間前(2016.9.1)にiPhoneで有名な米国アップル社に対するアイルランド政府の課税のあり方が欧州委員会で問題となっているとの報道がなされましたが(当ブログでも取り扱っています)、昨日(2016.9.16)には、そのアップル社の日本の子会社である「iTunes社」が東京国税局に約120億円もの追徴課税を受けていたとの報道がありました。

追徴課税されたのは、アップルの子会社で、東京・港区にある日本法人の「iTunes社」です。同社は、アップルの音楽・映像配信サービスの国内の利用者から手数料を受け取っており、その利益の一部を配信サービスで使うソフトウエアの著作権を持つアイルランドの別の子会社に使用料として支払う必要があったということです。

一般に、海外の企業にソフトウエアの使用料を支払う場合には、所得税を源泉徴収して日本の税務署に納税しなければなりませんが、この「iTunes社」は、アイルランドの子会社に対し、使用料に相当する額を別の名目で支払っていたということです。

東京国税局は、「iTunes社」が約2年間に別名目で支払った約600億円は本来、源泉徴収が必要な使用料に当たると判断し、約120億円を追徴課税し、同社はすでに全額を納付しているそうです。

海外の企業に対する送金が、「役務提供の対価」であれば、国内の送金者は源泉徴収をする必要はありませんが、それが「ノウハウの使用料」(いわゆるロイヤルティ)であれば、前述のとおり送金者に源泉徴収義務が生じます。これが国際課税のルールです。

今回の「iTunes社」への課税は、このあたりの認識の誤りがあったのだと思われます。

○ 「役務提供の対価」  : 源泉徴収の必要なし

○ 「ノウハウの使用料」 : 源泉徴収義務あり

「役務提供の対価」と「ノウハウの使用料」については、区分がかなり微妙なケースもありますが、両社の区分はおおむね次のように考えることができます。(OECDモデル条約12条関係コンメンタリーより)

「ノウハウの使用料」

  • 「特別の知識及び経験」を提供し、受領者は自己の責任でそれを使用する
  • 提供者はその使用に関与せず、使用の結果も保証しない
  • ノウハウ提供契約は、ほとんどの場合、既存のノウハウを提供するだけである
  • コンピュータプログラムに関する情報の提供については、次のすべてを満たす対価が該当
  1. その対価がロジック、アルゴリズム、プログラミング言語等のアイディア及び原理を構成する情報のために支払われ、
  2. 顧客は許可なく当該情報を開示しない条件で提供され、
  3. その情報がトレード・シークレット(企業の財産的価値のある秘密情報)の保護対象となっている

「役務提供の対価」

  • 他の者のために役務を提供し、その自己の仕事の実施のために必要な慣用技術を使う
  • 専門知識、技術、経験を自らのために使用するが、契約相手にこれらを譲渡することはない
  • 提供される役務の性格により、調査、デザイン、実験、作図等を行う被用者の給与や賃金、下請業者に対する支払等の多額の費用が役務提供者に発生する

【役務提供の対価の例示】

  • アフターケア・サービスの対価
  • 保証に基づき売主が買主に提供するサービスの対価
  • 入手可能な情報から作成された見込顧客リストの対価
  • 技術者、弁護士、会計士等により提供される専門的な助言の対価

最近では、国税局だけではなく税務署でも国際源泉税の調査の強化が図られています。
海外のビジネスパートナーへの送金に関する源泉徴収手続きは一歩間違えれば大きな課税問題に発展することがあるので慎重に対応する必要があります。

 

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