ついに発動！！　過少資本税制！！

旧村上ファンドの村上世彰氏が関連する会社が、東京国税局から約15億円の法人税の申告漏れの指摘を受けたそうです。（日経・7月29日朝刊）

村上世彰氏といえば、2000年初頭、「もの言う株主」としてターゲット会社の株を買い占め、短期的に株価をつり上げて売り抜けるというパターンを繰り返す投資手法で注目を集めていました。

ただ、このような強引な手法は各方面からの批判を浴び、最終的にはニッポン放送株のインサイダー取引で逮捕され、有罪判決を受けることとなりました。

その後は拠点をシンガポールに移し、自己資金の運用をしていたようです。

今回、東京国税局が指摘したのは、「過少資本税制」というルールに抵触していたというものです。

会社が外部から資金を調達するには「出資＝資本」として受け入れるか、「融資＝借入金」として受け入れるかのどちらかになります。

「出資＝資本」として資金を受け入れた場合は、「配当」を出資者に支払うこととなりますが、この「配当」は法人税の計算上、費用として認められません。

一方、「融資＝借入金」として資金を受け入れた場合は、「利子」を融資した者に支払うこととなり、この「利子」は法人税の計算上、費用として認められることとなります。

「過小資本税制」は、内国法人が外国の株主（外国の親会社、外国の個人の大株主など）から資金調達をするに際し、「出資」に比べ「借入金」が過大な場合に、その外国の株主に対する支払利息の費用計上に一定の制限を加えるルールです。

これにより、出資に代えて借入金を多くすることによる租税負担の軽減の防止を図っています。

シンガポールにいる村上氏は日本の会社に資金を貸し付け、利息を得ていましたが、その日本の会社は、同氏からの借入金に比べて出資が過少と判断され、その支払利息うち15億円の費用計上を否認されたものです。

この「過少資本税制」という国際課税ルールは、日本に1992年に導入されましたが、導入後、この制度が適用され、企業の支払利息の費用計上（損金算入）が当局に否認されるケースは、いままでほとんどありませんでした。（私の知っている限りではゼロです。）

今回の課税は、極めて珍しい判断だったと言えます。

世界を股にかけて展開する国際企業（グーグルやスターバックスなど）の租税回避の問題（ＢＥＰＳ）やパナマ文書で明かされた富裕層等のタックスヘイブン国での蓄財など、国際的な税逃れが国民レベルで注目を集めています。

そうした背景の中、国際取引に関する課税の強化は、世界的に高揚してきているように思われます。

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