「みなし配当」について
「収益」として認識される配当(受取配当)とは、企業活動から得た「利益」を原資とした株主への配当である点において会計及び税務、両者は共通した認識を持っています。
また、会計上、企業活動から得た利益を留保しているのが「利益剰余金」であり、その利益剰余金をベースに会計と税務の損益の認識の差異を調整し、税務上の利益の留保を表したものが「利益積立金額」となります。
会計上の「利益剰余金」を原資とする配当があった場合、株主(受け手)は、会計上、受取配当として処理し、税務上もそれに従います。すなわち、一般的な利益の配当は会計上も税務上も足並みをそろえて受取配当として扱うこととなります。
しかし、税務上認識する受取配当はそれに留まらず、そのまま利益の配当に該当しない場合であっても(すなわち、「利益剰余金」からの配当処理以外の株主への還元)、経済実体として利益の留保額の中から支出されたと認められる金銭その他の資産の交付があれば、その支出は税務上、「利益積立金額」を原資とする配当とみなして受取配当として処理することとし、当該配当を「みなし配当」と呼んでいます。
例えば、法人が自己株式を取得した場合、会計処理上は取得した自己株式は、取得原価をもって純資産の部の株主資本から「自己株式」として控除し、利益剰余金の減額は行われませんが、税務上はその自己株式の取得対価を「資本金等の額」及び「利益積立金額」の減少額として捉えることにより、株式を当該法人へ譲渡した株主には「みなし配当」(利益積立金額の減少部分)があったものとして扱われることとなります。
「みなし配当」の金額は、株主が出資先の法人から交付を受けた金銭等の額が当該法人の「資本金等の額のうちその交付の基因となった株式に対応する部分の金額」を超える場合のその超える部分の金額をもって算定します。(法法24?)
なお、上述の「資本金等の額のうちその交付の基因となった株式に対応する部分の金額」が、譲渡対象となった株式の譲渡対価となり、この譲渡対価と当該株式の帳簿価額(=譲渡原価)との差額が当該株式の譲渡損益として当該株主(法人)の所得金額の計算上、益金又は損金の額に算入されることとなります。(法法61の2?)
「みなし配当」は以下の「みなし配当事由」に該当する取引が行われた場合に生じることとなります。(法法24?一?六)
(1) 合併(適格合併を除く)
(2) 分割型分割(適格分割型分割を除く)
(3) 資本剰余金を原資とする配当又は解散による残余財産の分配
(4) 自己株式の取得
(5) 出資の消却等
(6) 組織変更