税務調査が行われる場合、原則的に事前に調査の日時、対象税目、期間など電話による通知がなされますが、現金商売をしている事業者(個人事業主や法人)や不正計算をしていると目される事業者に対しては、例外的に事前通知を行わず突然事業者の事務所や自宅に調査官がやって来ます。これは、事業の現状を確認し、証拠の隠滅を防止するためにとられる措置です。
事前通知なく、突然調査官がやってきた場合、次のことを心掛けて対応すべきとなります。
(1) 本当に税務署の職員であるかの確認
まずは、自宅や事務所にやってきた人が本当に税務職員かどうかを確認してください。近年、様々な詐欺が横行しています。中には税務職員を装って接触してくるケースもあるようです。そのため、税務調査として突然、自宅や事務所にやってきた人が本当に税務署の職員であるかどうかを確認する必要があります。具体的には、①「身分証明書」及び「質問検査章」の提示を求めるとともに②名刺の交付を求めてください。①の「身分証明書」及び「質問検査章」の提示は、法定の行為(=調査官の義務)ですので、その行為を伴わない調査は違法であるか詐欺であるかのいずれかに該当します。
身分証明書:その職員の氏名、所属(○○税務署○○課税部門)、職名(一律「財務事務官」と記載されています。)が記載されています。大きさは通勤定期サイズで定期入れに入るサイズ。
質問検査章:税務調査をする権限を付与されていることの証明書。大きさは身分証明書と同じ。
必ず、「身分証明書」及び「質問検査章」の両方が提示されることを確認してください。
②の名刺の交付は法定行為ではなく任意の行為であるため、交付する調査官と交付しない調査官がいます。名刺の交付がなければ、身分証明書から氏名、所属(○○税務署○○課税部門)をきちんと確認し、記録しておく必要があります。相手が税務職員であることが疑わしい場合は、迷わず所属税務署に連絡し、その氏名の調査官が実在しているかどうか、現在調査のために来ているがそれで間違いないか確認する必要があります。
(2) 日程の調整
突然税務署の調査官が自宅や事務所にやって来ても、その日の業務上あるいはその他のスケジュール上、対応が困難な場合も当然あります。むしろ、それが当然であると考えられます。その場合は、当日は対応できない理由をきちんと説明し、調査の日取りを調整してもらうことが可能です。
とはいえ、調査官は事前通知をあえてせずに突然やって来たことに、「現状のままの状況を確認」するという目的(理由)があったわけですから、その日の調査に対応せず日程を後日に延ばすことは、(有体に言えば)調査官に「証拠隠滅のための時間稼ぎ」との印象を与えてしまい、疑心暗鬼のまま次の調査が始まります。したがって、なるべくなら当日のスケジュールを可能な限り調査し、その日の調査にせめて1時間でも対応するのが得策といえます。ただ、無通知で調査官がやって来る調査の場合、事務所の机の引き出し、書類棚・キャビネット、金庫などの中の保存書類などについて確認するいわゆる「現況調査」が必ず行われますのでそのことは念頭に置いておくべきです。
(3)調査への対応
税務調査の対応には必ず、税理士を立会いさせてください。顧問税理士がいない場合は至急税務調査に精通した税理士に立会いを依頼します。税理士の立会のない税務調査は、素手で武装された相手と戦うようなものです。戦力の高い税理士に立会を求めるのが得策です。