実際は赤字決算であるにもかかわらず、取引先や金融機関など に対する影響、入札参加資格の確保等の理由から、架空の利益を 計上するなどして仮装経理(粉飾決算)を行って黒字決算とし、その決算に基づいて過大に法人税の申告を行うような企業があります。
このような仮装経理は、会社法や企業会計上問題があり、本来認められないものです。 また、税務上もこのような仮装経理を抑制するため、架空の売上げを計上したり、架空の在庫により期末棚卸高を水増し計上するなど、事実を仮装した経理を行って過大な申告を行った場合には、その過大申告分に対する減額更正や過大納付税額の還付につき制限を設けています。
本来、申告書に記載された所得金額や法人税額が税法の規定に 従っていない場合、税務署長は調査により正当額に更正することとされていますし、納税者側からも申告期限から一定期間内であれば更正の請求をすることができます。 しかし、申告額が正当な所得金額を超えている場合であっても、 その超える金額のうちに事実を仮装して経理したところに基づくものがある場合には、税務署長はその法人が、その仮装経理の額をその後の事業年度の確定した決算において、その事実を修正する経理をし、その決算に基づく確定申告書を提出するまでの間は、 仮装経理による申告額については減額更正しないことができると されています。
例えば、架空売上げ5,000万円を計上して過大申告を行った法人が更正の請求をしたとしても、その過大申告額に係る減額更正は、仮装経理を行った後の事業年度において法人が過年度損益修正損5,000万円を計上するなどの修正経理を行い、それに基づく 確定申告書(計上された修正損5,000万円は自己否認)を提出するまでは行われないことになります。
また、仮装経理をした事業年度の所得につき減額更正が行われた場合であっても、仮装経理により過大に納付した法人税がただちに全額還付されるというわけではありません。 還付されるのは、その減額更正の日の属する事業年度開始の日前1年以内に開始する各事業年度の所得に対する法人税の額でその減額更正の日の前日において確定している金額までの額に限られています。そして残額は、その減額更正の日の属する事業年度開始の日以後 5 年以内に開始する各事業年度の所得に対する法人税の額から 順次控除し、 5 年経過後になお残額がある場合に還付されることになります。