海外子会社に負担させる金型費用

私の会社は、製品の設計をして、下請け会社へ部品を発注しそれを仕入れ、パーツを組み立て製品にして販売を行っています。

下請け会社が使用する部品の生産のための金型の製作費用は、当社が負担しています。
ただ、その金型で生産される部品は当社の海外子会社も使用していることから、金型の製作費用の一部を負担させることにしました。
負担金は、金型償却費と金利分のうち、海外子会社が引き取る部品の割合に相当する金額で検討中です。

このようなやり方は、国際税務上(移転価格税制上)何か問題になったりしますか?通常の利益などは考慮しておりません。

応分の負担をさせていれば特に問題はないと考えられます。

基本的に商行為は私的自治の範疇であり自由に価格を設定できますから、投資額の回収方法は当事者の意思により自由に決めることができます。ただ、トータルで見た場合に、資本関係のない独立企業間で行われたとした場合に付されるべき価格と乖離する価格で取引している場合は移転価格税制の適用対象となります。

乱暴な言い方になりますが、その乖離の「程度」が、移転価格税制が発動されるかどうかの判断基準となるのが実務上の取り扱いです。

乖離幅が億円単位になると、確かに税務上看過することはできず、移転価格調査の対象となる可能性が高まりますが、合理的に実費分を回収している状態であれば、利益まで徴していなくてもある程度税務当局も許容してくれるのではないかと考えます。ただ、基本的には通常の利益を加味して海外子会社に負担を求めるのが移転価格税制の基本的な考え方です。

移転価格税制対策上、保守的に処理するためには「事務手数料」や「金型製造事務代行料」などの名目で利益を徴しているのがベターでしょう

ただ、お尋ねのケースで気になるのは、「金型製作費用」にハードとしての金型取得費だけでなく、金型の設計に投下したソフトパワー(労務費・外注設計費など)のコストも含めて海外子会社から回収しているかどうかです。その点十分にご注意ください。

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元国税調査官の税理士:渡邊 崇甫
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このQ&Aの回答者

渡邊 崇甫税理士(元国税局調査官)
これまでの経歴
  • 国税局 調査第一部 国際調査課
  • 国税局 調査第一部 特別国税調査官
  • 国税不服審判所(本部)
著書

元国税の税理士だから
税務調査対策が万全

専門性の高い国税職員経験を
活かした万全な対策。