源泉所得税は原則、給与等を支給した日の翌月の10までに納付する義務がありますが、それを遅れて納付すると本税の他に不納付加算税を課されることとなります。不納付加算税については国税通則法第67条に規定されています。
国税通則法
(不納付加算税)
第六十七条
1 源泉徴収による国税がその法定納期限までに完納されなかつた場合には、税務署長は、当該納税者から、…納付された税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収する。
2 源泉徴収による国税が…納税の告知を受けることなくその法定納期限後に納付された場合において、その納付が、当該国税についての調査があつたことにより…告知があるべきことを予知してされたものでないときは…当該納付された税額に百分の五の割合を乗じて計算した金額とする。
法定納期限までに源泉所得税を納めていない場合、税務署からの指摘により本来の税額の10%(第1項)、指摘される前に自主的に納付すると5%(第2項)の不納付加算税が徴収されることとなります。
ただし第3項には次の通り、宥恕(ゆうじょ)規定が定められており、一定の条件を満たせば不納付加算税の納付が免除されることとなっています。
3 前項の規定に該当する納付がされた場合において、…法定納期限までに納付する意思があつたと認められ…かつ、当該納付に係る源泉徴収による国税が法定納期限から一月を経過する日までに納付されたものであるときは、適用しない。
すなわち、
(1) 確かに納付は遅れたが、納付の意思はあったと認められる。
(2) 納期限から1ヶ月内に納付している。
の、両方の条件が揃えば加算税は免除しますという規定です。そして、この「納付の意思があったと認められる場合」について、国税通則法施行令でもう少し詳しく書かれています。
国税通則法施行令
(期限内申告書を提出する意思等があつたと認められる場合)
第二十七条の二
法第六十七条第三項 (不納付加算税)に規定する法定納期限までに納付する意思があつたと認められる場合と…は、同項 に規定する納付に係る法定納期限の属する月の前月の末日から起算して一年前の日までの間に法定納期限が到来する源泉徴収による国税について、次の各号のいずれにも該当する場合とする。
一 …納税の告知…を受けたことがない場合
二 …法定納期限後に納付された事実…がない場合
すなわち、その納付期限の前月の末日から1年前まで遡って、延滞して税務署から告知処分を受けたり、期限を過ぎた納付をしたことが無い場合、納付する意思があったとみなすということです。
以上をまとめると、
(1) 過去1年間に納期限を経過した後に遅れて納付したことがなく
(2) 今回の納付につき、納期限から1ヶ月内に納付している
場合、不納付加算税は免除されることとなります。
お尋ねの場合、前年の7月1日以降納期限経過した後に遅れて納付したことがなく、今回の源泉所得税の納付を9月10日までに納付した場合、不納付加算税の免除を受けられることとなります。この免除は、特に手続きが必要なわけではありません。税務署の判断で不納付加算税の賦課決定を決議しないということとなります。
8月に支給したことにすれば、源泉所得税のは納期限は9月10日となり、不納付加算税は発生しませんが、税務調査が行われれば、実際の給与振込日など、すぐに事実関係が把握されて、重加算税(35%)が課される可能性が高まります。やめておいた方が良いでしょう。