当社は、中古の建物を取得し、リノベーションすることにより価値を高め、それを販売することを主な事業としています。
近年、外国観光客の増加や民泊新法の制定による法律の整備などに伴い、京都など歴史ある観光地に所在する古民家の再生・再利用のニーズが高まっています。
そこで、当社は主に京都にある築年数が50年を超えるような古民家を安価で仕入れ、それを昔ながらの風合いを再現するような大掛かりな内装工事(リノベーション)をしたうえで、その物件を客先に販売する取引に注力しています。
そこで質問ですが、このようなリノベーションをした古民家を取得した客先においては、当該物件を減価償却する際に、中古資産の「簡便法による耐用年数」を適用することが出来るのでしょうか?
中古資産の「簡便法による耐用年数」を適用した場合、法定耐用年数22年(建物・木造・住宅用のもの)を超過しているため、耐用年数は22年×0.2=4年(端数切捨て)となります。
中古の資産を取得した場合における税務上の耐用年数については、その中古の程度による相応の耐用年数(通常の法定耐用年数より短い期間)を適用することが認められています。
具体的な中古資産に係る耐用年数の取扱いは、以下のいずれかの選択となります。(耐用年数省令3条「中古資産の耐用年数等」)
1「見積りによる耐用年数」:使用可能期間を見積もる方法
2「簡便法による耐用年数」
- 法定耐用年数の全部を経過した資産:法定耐用年数の20%に相当する年数
- 法定耐用年数の一部を経過した資産:(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
(1年未満の端数は切捨て、2年に満たない場合には2年とする)
なお、中古資産を事業の用に供するために支出した資本的支出の金額がその中古資産の取得価額の50%に相当する金額を超える場合、上記2の「簡便法による耐用年数」によることはできません。
本件においては売主がリノベーションをしているため買い手には見えない状況となっています。ただ、常識的に築50年の建物の減価償却資産的価値はほぼゼロに近いと考えられ、売主の行為ではあるものの、資本的支出の割合はもとの建物の価値の50%を超えていると常識的に考えらます。
また、例えば売り主がリノベーションで、新築に近い程度の費用をかけているにもかかわらず、買い主が簡便法により数年で償却するのであれば、実態と掛け離れているという指摘になるかもしれません。
また、売り主と買い主のどちらがリノベーションしたかで、償却が大きく異なることも実態と掛け離れていると考えられます。
法令の文理的な側面からいえば、前述の「中古資産の耐用年数等」の取扱いについては、耐用年数省令3条に定められていますが、その中で中古資産を「個人において使用され、又は法人において事業の用に供された減価償却資産」と規定しています。換言すれば、「個人または法人が自ら使用している固定資産」ということになります。
貴社が中古住宅を取得しそれにリノベーションを加えて販売するとなると、その資産はもはや自ら使用している固定資産ではなく棚卸資産に該当することとなります。
そうしますと、お尋ねの事例の場合、そもそも耐用年数省令3条に規定する「中古資産の耐用年数等」の取扱いの対象外という解釈も成り立ちます。
以上から考えますと、お尋ねの事例の場合、中古資産の「簡便法による耐用年数」の適用は課税リスクが高いと言わざるを得ません。