お尋ねのケースにおける社屋の修繕に要した費用については、次の区分に分けて支出の内容を考える必要があります。
(1) 原状回復のために要したと認められる部分:コンクリート張替工事180万円
(2) 価値を増加させる部分:防水加工処理70万円
上記(1)の部分は「修繕費」、(2)の部分は「資本的支出」として扱われることとなります。
【「修繕費」と「資本的支出」の区分】
固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、その固定資産の維持管理や原状回復のために要したと認められる部分の金額は、「修繕費」として支出した時に損金算入が認められます。
ただし、その修理、改良等が固定資産の使用可能期間を延長させ、又は価値を増加させるものである場合は、その延長及び増加させる部分に対応する金額は、「修繕費」とはならず、「資本的支出」となります。
「修繕費」になるかどうかの判定は修繕費、改良費などの名目によって判断するのではなく、その実質によって判定します。
例えば、次のような支出は原則として「修繕費」にはならず「資本的支出」となります。
「資本的支出」に該当するものの例
- 建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
- 用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額
- 機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうち通常の取替えの金額を超える部分の金額
ただし、一つの修理や改良などの金額が20万円未満の場合又はおおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良などである場合は、その支出した金額を「修繕費」とすることができます。
「修繕費」としてしょりできるものの例
- 一つの修理や改良などの金額が20万円未満
- おおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良
次に、一つの修理、改良などの金額のうちに、「修繕費」であるか「資本的支出」であるかが明らかでない金額がある場合には、次の基準によりその区分を行うことができます。
- その支出した金額が60万円未満のとき又はその支出した金額がその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額のおおむね10%相当額以下であるときは「修繕費」とすることができます。
- 法人が継続してその支出した金額の30%相当額とその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を「修繕費」とし、残額を「資本的支出」としているときは、その処理が認められます。

また、災害により被害を受けた固定資産(被災資産)について支出した費用については、次により「資本的支出」と「修繕費」の区分をします。ただし、評価損を計上した被災資産を除きます。
- 被災資産につきその原状を回復するために支出した費用は「修繕費」とします。
- 被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止などのために支出した費用については、法人が「修繕費」とする経理を行っている場合はその処理が認められます。
- 被災資産について支出した費用(上記の2つの費用は除く)の金額のうち、「修繕費」であるか「資本的支出」であるかが明らかでないものがある場合には、法人がその金額の30%相当額を「修繕費」とし、残額を「資本的支出」としているときは、その処理が認められます。
ただし、被災資産の復旧に代えて資産を取得したり、貯水池などの特別の施設を設置したりする場合は、新たな資産の取得になりますので、「修繕費」としての処理は認められません。
(法令132、法基通7-8-1~6)