弊社は自動車部品を製造する会社です。
このたび、創業者である会長が退任するにあたり、それまでの功績に応じた退職金を支給することを社内方針として決定しています。
ただ、税務上の役員退職金の上限を測定する際に一般的に利用されている算式(最終月額報酬×勤続年数×功績倍率)により算出された金額を超過した金額を支払います。
すなわち、税務上過大役員退職金と認められる部分の金額が生じることとなります。
そのため、その過大役員退職金と認められる部分の金額は、会社の所得金額の計算上、損金不算入として扱う予定です。
この場合、退職金を受け取る個人(弊社の会長)側の所得税の取扱上、当該過大役員退職金と認められる部分の金額は、退職金ではなく賞与(給与所得)としてすべきなのでしょうか。
それとも、損金不算入部分も含めてすべてが退職金(退職所得)となるのでしょうか。
源泉徴収の計算額にも影響しますので、その点を明らかにしたいと考えております。
所得税法30①に退職所得とは、「退職により一時に受ける給与」に係る所得と規定されています。
法人税の所得金額の算定上、過大役員退職金として否認された部分について、「給与所得」として所得の種類を変えて取扱う特段の規定は所得税法に定められておりません。
したがって、法人税の所得金額の計算上、過大役員退職金として否認された部分についても、それが退職金として「退職により一時に受ける給与」に該当する限り、受給した役員側としてはあくまで退職所得として扱われます。
【参考】
退職所得の該当性(退職により一時に受ける給与)とは・・・
最高裁昭和58年9月9日判決
退職所得の該当性に係る基準として
1)退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること(つまり退職基因要件)、
2)従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払いの性質を有すること(つまり労務対価要件)、
3)一時金として支払われること(つまり一時金要件)
実質的にこれらの要件を満たすものであれば、「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うことが相当であるという判断を示しています。