未払いで役員報酬を計上

設立したばかりの代表者1人の会社です。

役員給与ついては、しばらくの間、利益も見込めないことから報酬を受けるつもりはないのですが、実際経営をしながら無報酬というのもよくないと考え、年間100万円程度(月額8万円くらい)計上することとし、法人に対する債権にしておきたいと考えております。

この場合、月8万円を役員報酬として代表の個人口座に振り込み、会社に資金を実際に還流させ、貸付とするのが帳簿と整合性のある実務処理だと思うのですが、会計処理として、振込みを省略し、役員報酬を未払計上しておくような方法は、税務上許容される(役員報酬の支払いとしてみなされる)のでしょうか。

 

役員に対する給与について損金算入が認められるのは、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与のいずれかに該当する場合のみです(ただし不相応に高額なものや隠ぺい仮装経理により支給されるものについては損金算入が認められません)。(法人税法34(1))

お尋ねの役員給与は、定期同額給与の類型に属するものと考えられますが、定期同額給与とは、「その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの」と定義されています。「支給額が同額」と規定されていることから規定の文言だけでみると支給されていることが前提となっています。

とはいえ会社の経理上、資金繰りの関係から役員給与を未払い計上することは珍しいことではなく、未払計上が即「定期同額給与」に非該当となるという扱いも現実的ではありません。

実際には、個別の事例ごとに是々非々を検討することとなります。

あくまで私見ですが、未払いにより役員給与を計上しても、計上後、短期のうちに支給すれば税務上大きな弊害はないと考えられ、「定期同額給与」の範疇に収まると考えられますが、実際に支払う意思が確認できないようなケースにおける未払計上は否認リスクが高まると考えられます。

少なくとも年に1回は役員給与の額の改定のタイミング(事業年度開始から3カ月以内)があるわけですから(業績悪化も改定理由の一つとなりますが・・・)、その改定のタイミングで会社の体力に見合う役員給与の負担額に直していくことができるわけです。したがって、改定のタイミングを超えて長期にわたり未払い計上すれば会社の真の意図として支給つもりはないと事実認定されることが想定され、「定期同額給与」として認められないことも考えられます。

また、やむなく未払い計上し、長期間、支払う体力が回復しない場合は、未払金を役員借入金などに振り替え、金利の収受もきちんと行うべきでしょう。

役員(使用人についても同じですが)に毎月支払われる給与等が、未払となる場合、源泉徴収は給与等を実際に支払う際に行いますので、原則として支払われるまでは源泉徴収は行われないこととなります。月額8万円であれば、源泉徴収税額表の甲欄を適用すれば、支給したとしても源泉徴収義務は生じませんが・・・。

参考までにですが、役員に対する「賞与」は、支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がされない場合には、その1年を経過した日において支払があったものとみなされ源泉徴収を行う必要があるので注意が必要です。

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元国税調査官の税理士:渡邊 崇甫
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このQ&Aの回答者

渡邊 崇甫税理士(元国税局調査官)
これまでの経歴
  • 国税局 調査第一部 国際調査課
  • 国税局 調査第一部 特別国税調査官
  • 国税不服審判所(本部)
著書

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