〇 日本における課税関係
日本の相続税法の規定では相続税の納税義務者は相続人であると定められているため、今回の納税義務者は相続人であるあなたになります。そして、相続又は遺贈により財産を取得した日本国籍を有する個人でその財産を取得した時において日本国内に住所を有していないものは、無制限納税義務が課されます。したがって、相続対象財産は世界中にある相続財産が対象となります。お尋ねのケースのように国外に相続財産が無い場合は、当然日本にある財産だけが課税対象となります。
ただし、相続財産に1億円以上の有価証券などの一定資産の合計額が1億円以上ある場合については、出国税(国外移転時課税制度)が課されます。この場合、出国税に係る所得は、被相続人の準確定申告(所得税)に上乗せされて申告されることになります。
〇 米国における課税関係
日本と異なり米国における遺産税(日本の相続税に該当します。)の納税義務者は被相続人(故人)となります。そして被相続人が非居住外国人の場合、課税対象となる遺産は米国に所在する財産(制限納税義務)だけとなります。
今回のケースでは被相続人であるお父様がずっと日本に在住されておられたようですので、被相続人であるお父様は米国において非居住外国人に該当するため、本件のように相続した財産のすべてが日本に所在する場合、米国における遺産税は生じないものと考えられます。
以上両国の法令に基づき検討しました。日米間には相続税に関する租税条約も存在しますが、本件に関してはその影響は直接受けないものと考えられます。ただし、財産の所在地国の判定が各国の内国法と租税条約とでは若干異なっている部分があるのでその点注意が必要です。