基本的に米国のLLCは日本においては外国法人として扱われるため、たとえそのLLCがパス・スルー課税を選択していても、その損失を直接日本の出資者が取り込むことはできません。
米国のリミテッド・ライアビリティー・カンパニー(LLC:Limited Liability Company)は、米国各州が制定するLLC法(Limited Liability Company Act )に基づいて設立される事業体です。LLC法は、1977年に米国ワイオミング州で制定されたのを皮切りに、現在では全米の各州(50州)及びコロンビア特別区において制定されています。
LLCは法人(Corporation)に似かよった性質を有していますが、米国の税務上は、事業体(LLC)ごとに、法人課税を受けるか、その出資者(メンバー)を納税主体とするいわゆるパス・スルー課税を受けるかの選択が認められています。
ある事業体を我が国の税務上、外国法人として取り扱うか否かは、当該事業体が我が国の私法上、外国法人に該当するか否かで判断することになります。
LLC法に準拠して設立された米国LLCについては、以下の理由等から、原則的には我が国の私法上、「外国法人」に該当するものと考えられます。
1 LLCは、商行為をなす目的で米国の各州のLLC法に準拠して設立された事業体であり、外国の商事会社であると認められること。
2 事業体の設立に伴いその商号等の登録(登記)等が行われること。
3 事業体自らが訴訟の当事者等になれるといった法的主体となることが認められていること。
4 統一LLC法においては、「LLCは構成員(member)と別個の法的主体(a legal entity)である。」、「LLCは事業活動を行うための必要かつ十分な、個人と同等の権利能力を有する。」と規定されていること。
したがって、LLCが米国の税務上、法人課税又はパス・スルー課税のいずれの選択を行ったかにかかわらず、原則的には我が国の税務上、「外国法人(内国法人以外の法人)」として取り扱うのが相当です。
ただし、米国のLLC法は個別の州において独自に制定され、その規定振りは個々に異なることから、個々のLLCが外国法人に該当するか否かの判断は、個々のLLC法(設立準拠法)の規定等に照らして、個別に判断する必要があります。