国外勤務の給与に対する課税関係 日本に納税義務はあるか?

現在、日本の会社に雇用され、マレーシアで1年以上働いています。

日本にいる上司から指示をうけ、マレーシアとは全く関係のない、日本に関する業務をしています。

給与は全て日本円で支払われて、日本で納税しています。

上司から役務の提供が日本の会社に対するものなので、マレーシアでの滞在期間に関わらず、全て日本での納税で問題ないと言われたのですが、この見解は正しいでしょうか。

【結論】

給与所得者の所得発生地は、勤務地で判断されるところ、あなたのマレーシアで勤務して使用人として役務を提供していますから、あなたの給与所得はマレーシアで生じていることとなります。また、あなたはマレーシアで1年以上生活していることから生活の本拠はマレーシアにあるものと考えられ、税務上マレーシアの居住者とみなされます。そうすると、あなたの給与所得は、マレーシアの居住者によりマレーシアで生じた(給与)所得となりますので、日本政府に課税権はなく、もっぱらマレーシアに課税権があるものと考えられます。

 

【関係法令等】

○ 日本の所得税が課される対象は、以下のとおりです。(所得税法5条)

  •     居住者の場合:全世界において生じた所得(注)
  •     非居住者の場合:日本国内で生じた所得

(注)外国税額控除により外国で課された所得税との二重課税を排除しています(所得税法95条)

 

 ○ 日本の居住者であるか非居住者であるかの判定は、以下のとおりです。(所得税法2条①三・五)

  •     日本国内に生活の本拠があれば ⇒居住者
  •     日本国内に生活の本拠がなければ ⇒非居住者

 一定の場所が「生活の本拠」に当たるか否かは、住居、職業、生計を一にする配偶者その他の親族の存否、資産の所在等の客観的事実に、居住者の言動等により外部から客観的に認識することができる居住者の居住意思を総合して判断します。(主な判例より)

 

○  給与所得の場合、その所得がどこで生じたかは「勤務地」で判定します。(所得税法161条①十二)

(誰のために働いたかは関係ありません)

 

○  マレーシアの居住者による給与所得は、日本国内で勤務したものだけが日本政府に課税権が認められています(日本マレーシア租税協定15条①)

 

 お尋ねの場合、あなたはマレーシアに1年以上滞在しておられるようですので、マレーシアに生活の本拠があると考えられ、マレーシアの居住者に該当すると考えられます。

すなわち日本の非居住者に該当します。

また、あなたがマレーシアで勤務したことにより生じる給与所得は、マレーシアで発生した所得となります。それがたとえ日本の会社のためのし仕事であっても、その判定は変わりません。

そうしますと、あなたがマレーシア国内で勤務して生じた給与所得は、日本政府からすれば「非居住者が稼得した国外の所得」ということになりますので、日本政府に課税権はないこととなります。

したがって、日本に納税する義務はないということとなります。

反面、マレーシアにおける納税義務がありますので納税義務を果たしていなければ、それを是正するための手続きが必要です。(期限後の確定申告など)

 

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元国税調査官の税理士:渡邊 崇甫
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このQ&Aの回答者

渡邊 崇甫税理士(元国税局調査官)
これまでの経歴
  • 国税局 調査第一部 国際調査課
  • 国税局 調査第一部 特別国税調査官
  • 国税不服審判所(本部)
著書

元国税の税理士だから
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