まず、修繕費と資本的支出の区分ですが、「修繕費」は通常の維持管理のための支出又は棄損した部分の原状回復ための費用をいい(法基通7-8-2)、「資本的支出」は資産の使用可能期間を延長させる部分又は価値を増加させる部分に対応する支出金額をいい(法令132)ます。このように、「修繕費」及び「資本的支出」はいずれにせよ既存の固定資産に対して支出する費用を対象としています。
ところで、資産を新たに取得した場合は、その取得のために直接、間接に要した費用をもって「取得価額」として計上することとなります(法令54①)。中古の不動産を取得し、リフォームを施し、当該リフォーム工事が完了した後に事業の用に供した場合は、たとえのそのリフォームの性質が通常の維持管理又は棄損部分の回復のための支出であったとしても当該リフォーム費用は修繕費に該当せず、不動産の取得価額として扱われることとなります。当該支出は、事業の用に供するために要した支出に該当するからです(法令54①一ロ)。派生的に考えれば、たとえ不動産を取得した後にいったん事業の用に供し、その後にリフォームが行われたとしても、その事業の用に供された期間(不動産取得からリフォームが実施されるまでの期間)が極めて短い場合など、当初より当該不動産はリフォームしたうえで正式に事業の用に供する意図があったと外形的にうかがい知れる状況にある場合においても同様の扱いを受けることと思料されます。
以上を踏まえたうえで、ご質問のリフォーム工事について検討いたしますと以下のことから、支出した金額の全額が不動産の「取得価額」に該当するものと考えます。
1 取得した29年度において同年の5月にはすでに工事が完了しており、不動産の取得とリフォーム工事は一体として当該不動産の取得価格を構成するものだと考えられます。すなわち、当該リフォーム工事費用は事業の用に供するために要した費用とみるのが妥当です。
2 リフォーム工事は一括発注した工事であることから、上記1の背景も加味すれば、工事全体としての性質を検討すべきで、請求明細の個々の内容を検討するものではないと考えられます。