推計課税とは、税務署長が所得税または法人税について更正・決定をする場合に、直接資料によらずに、各種の間接的な資料を用いて所得を認定する方法です。
本来、直接資料を用いて所得の実額を把握すべきところ、直接資料が入手できないからといって、課税を放棄することは、公平負担の観点から適当でないことから、推計課税が認められています。ただし、青色申告に対して更正を行う場合には推計課税は認められません。
そして、推計課税が適法であるか否かは、その推計課税を実施する「必要性」と「合理性」があったか否かで判断されます。
【必要性】
所得税及び法人税では、申告納税が原則であり、本来的には実額課税であることから、その濫用を防止する観点から、「推計課税の必要性」は、推計課税の適法要件であるとされており、資料の不存在・不正確、納税義務者の非協力などの場合にのみ許されると解されています
お尋ねのケースでは、例えば、入手可能な直近数日間の売上(実額)に比し売上ノートに記録された売上高は著しく僅少である、仕入れの具材に比し売上が僅少であると合理的に立証することができる、年間所得30万円と年間の生活費との均衡が著しく整合していないなどの理由があれば、売上ノートの金額は不正確なものとして扱われ、推計課税が行われる「必要性」があると言えるでしょう。逆にいえば、上記のような事実関係がないと推計課税の「必要性」はないこととなります。推計課税をするのであれば、売上ノートの金額を採用できない合理的な理由を当局側はきちんと示さなくてはなりません。何をもって推計課税をする「必要性」条件を満たしたのかといことです。
【合理性】
当然のことながら、推計の方法は、実際の所得に近似した数値を算出することができる合理的なものでなければ違法でとなります。合理性があるものとして、実務上用いられ、裁判例も支持している主要な推計課税の方法としては、純資産増減法、(同業者)比率法、効率法、消費高法があります。合理性の程度については、一応の合理性があれば足りるとする裁判例が多いのが現状です。