利益の繰り延べ、節税対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
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会社経営者です。

税引前利益で今期の利益の目処がたったものに、そのまま税金が課税されるのは、将来の確証がないことを考えると避けたいという気持ちになります。

利益の繰り延べ、節税対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

将来の確証がないなかで、利益を残し、万一のときに備えたいと考えるのは当然のことと思います。

当社でも同じような考えのもと、「絶対つぶれない会社づくり」を目的に利益の繰り延べを行ってきた経験があります。

以下、当社が安定経営のために行った利益の繰り延べに関して、その考え方と実際に行った対策をご紹介します。

当社が、繰り延べを行った目的は、万一、本業の売上が0になっても事業を継続できるよう売上の保証を作るためです。

本格的な繰り延べをスタートしたのは、大きな売上があがった2015年となります。

2015年当時を起点とし、代表と従業員の年齢を加味して、取り組み期間を短期、中期、長期に分けました。

具体的には「〜5年先までの売上」を短期、「5年〜10年先を中期」、「10年〜20年先」を長期と定義づけ、取り組む順番は「中長期」からと考え、利益繰り延べの商品へ投資をしてきました。

短期ではなく、中長期からはじめた理由は、当社の事業はIT事業であり、お客様の視点でサービスを提供している以上、翌年の売上が0になる可能性は低かったからです。

一方、10年20年先の未来は、時代のながれの変化やインターネットに代わるものが現れるということは考えづらいですが、なにが起きるか分からない不安がありました。

実際に行ってきた商品は以下のようなものです。

▼中期

▼長期

この他、長期間かけて「不動産投資」にて家賃収入で従業員の給与が支払えるしくみ作りにも取り組んできました。

中長期先の売上の保証がパズルのように一つ一つ埋まっていくながれの中で、安心感をもとにさらなるチャレンジができました。

そのおかげで、結果的に短期の繰り延べをしなくてよくなる状況を作れたほか、これから先の売上は一切心配不要な状況を作ることができました。

当社の場合、上述のとおり選んだ商品は、主に「法人保険」と「オペレーティングリース」です。

法人保険については2019年の国税庁の通達により、節税目的での加入には効果がなくなっています。

また、オペレーティングリースのメリットは、法人保険のように毎年継続支払いはなく、はじめの1回きりのみであるものの、最低でも3000万円は必要となります。

ご質問者さまがどのくらいの予算で繰り延べを検討されているかが分かりませんので、以下、現在でも可能な繰り延べ商品を金額別と期間別にご紹介します。

100万円〜1000万円の繰り延べ

▼短期(〜5年までの繰り延べ)

▼中期(〜10年までの繰り延べ)

▼長期(10年〜の繰り延べ)

1000万円〜の繰り延べ

▼長期(10年〜の繰り延べ)

3000万円〜の繰り延べ

▼短期(〜5年までの繰り延べ)

▼長期(10年〜の繰り延べ)

なお、これらには、金額、期間の特徴以外にも「投資金額を減価償却をしていく節税」「投資金額が全額その期の損金になる」など商品ごとに特徴が分かれています。

減価償却の節税については、購入する対象の耐用年数と定率法あるいは定額法に基づき、月割で損金算入額を算出していくものですので、期末に投資をしてもほとんど損金算入ができなくなります。

そのような点も加味しながら、ご自身の計画に合わせて最適な商品に投資をし、安定経営のための繰り延べを行うことをおすすめします。

詳しい状況をお聞かせいただきましたら、具体的なご提案も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。