役員報酬約800万は適正でしょうか。今後、もっと役員報酬を上げても大丈夫なのか、それとも会社にもっと残すべきなのかアドバイスをください。

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
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企業の利益と役員報酬の関係について。

従業員5名ほどの小さな会社を経営しています。

現在の役員報酬は約800万円/年ですが適正でしょうか。

今後、もっと役員報酬を上げても大丈夫なのか、それとも会社にもっと残すべきなのかアドバイスをください。

なお、今まで無借金経営で今後も銀行から借り入れする予定はありません。

ご質問内容からでは、一概に「適正」「不適正」と判断することは難しいです。

適正かどうかを考える上で、ご質問者様が「どのような経営方針で事業を進めるか」が重要だと思います。

個人の資産を残したい場合であれば、役員報酬を上げるべきです。

一方、会社を大きくしたいと考える場合には役員報酬は上げずに、会社に残すことを選択すべきです。

以下、当社が行ってきた経営とその考え方をご紹介します。

当社では、事業を継続していくためには会社と経営者個人のお金は同じと考えています。

そのため、どちらか一方に偏るのではなくバランスが重要と考えています。

その上で、優先順位は「会社の資産強化」を先に行い、その後「個人の資産強化」へ移行しました。

具体的には、会社が絶対につぶれない状態を作るまでは役員報酬は900万円以内で抑えてきました。

役員報酬額を900万円以内にした理由は、個人と法人の税率を考慮したためです。

個人の所得は累進課税制度であり、課税所得が900万円以上になると税率は33%となります。(所得税と住民税)

一方、法人税の実効税率は34%となります。

社会保険料もあわせて考えると、900万円を超える場合には個人の方が残るお金が少なくなります。

そのため、ある一定の状態になるまでは「税率33%」のラインを基準として役員報酬を設定し、会社の基盤づくりを行いました。

その後は、役員報酬を段階的に上げながら個人の資産強化と会社の資産強化の両方を進めてきました。

以下、それぞれ当社が会社の資産強化と個人資産強化に利用した節税商品となります。

▼会社の資産強化に利用した節税

  • 倒産防止共済
  • 法人保険(長期平準保険、逓増定期保険、保険料が全額損金になる保険)
  • 航空機・タンカーオペレーティングリース
  • 不動産投資

*なお、法人保険に関しては2019年の国税庁による通達により、現在節税としての利用メリットはなくなりました。

現在も利用できる利益繰り延べの商品については、以下のページにてご紹介します。

絶対つぶれない会社づくりのために当社が計画的に行ってきた繰り延べに対する考えも合わせてご説明していますので、ぜひご覧ください。

▼個人資産強化に利用した節税