法人保険に加入した場合、保険料は税制上どのような扱いになるのでしょうか。

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
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会社を経営し始めてまだ数年です。

業績が好調につき節税対策として保険の加入を考えています。

法人保険には加入しておりません。

個人で加入している保険は控除がありますが、法人保険の保険料はどのような扱いになるのでしょうか。

法人保険は、保険料の「全額」や「1/2」「1/3」「1/4」を損金算入できます。

節税目的での加入は主に損金額が大きい「全額」や「1/2」が多く選ばれます。

例えば、保険料500万円で全額損金保険に加入した場合、500万円全額が利益から圧縮できます。

よって、法人税は150万円節税できます。(税率は30%で計算)

法人保険は、解約時の返戻金を経費で払う「出口戦略」が重要

保険は加入するだけでは、節税にはなりません。

保険料を払う時点では、損金として計上できますが、解約時の返戻金は益金となります。

全損保険であれば、返戻金の全額が益金になりますし、半分損金の保険であれば、返戻金の半分が益金となります。

このように、保険は利益の先延ばしをするだけで、解約時の返戻金を経費で払う出口戦略がなければ法人税を払うことになってしまいます。

保険商品を選ぶ基準

出口戦略を決めるとともに、保険の解約時期に応じて加入する保険を選びます。

▼長期平準定期保険

加入から10年~20年で返戻率のピークを迎えます。

そのため、将来の退職金を準備するなど長期的な目的で加入するのがおすすめです。

▼逓増定期保険

加入から数年で返戻率のピークを迎えます。

そのため、退職時期があと数年の場合や、事業投資や設備投資など経費としてお金を使う用事が数年後にある場合におすすめです。

なお、逓増定期保険には、短期的な繰り延べだけでなく利益を個人へ移転する活用方法もあります。

私のクライアントの場合、加入から数年には大きな投資先がなかったため、利益移転の方法で逓増定期保険を活用しました。

クライアント加入の事例は以下をご覧ください。

生命保険にこだわらない場合、最優先で行うべき節税対策は倒産防止共済です。
最大800万円まで繰り延べでき、以下のような優れた性質を持っています。

  • 公的機関の運営だから安心
  • 一切目減りしない貯蓄的な機能がある
  • 必要な時期がくるまで解約しなくていい

また、小規模企業共済も社長個人の退職金準備として法人保険よりも優先順位が高いので早い段階で加入することをおすすめします。