税金対策に備品の購入、不動産、車、設備投資以外になにがあるか教えてください。

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渡邊 崇甫税理士(元国税局 調査官)
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中小企業経営者です。税金対策についての質問です。

中小企業の税金対策の手段として、私は以下の2つは理解しています。

    1. 経費として備品を購入(翌年の分まで必要なものを見越して購入するなど)
    2. 不動産、車、その他設備に投資

これ以外に方法はありますでしょうか。

ご質問者様が仰る税金対策以外の方法をお伝えする前に、質問内容にありました2つの対策に対して少しだけ補足をしたいと思います。

備品の購入は、使用してはじめて必要経費になります。

そのため、翌年の分まで必要なものを見越して購入した場合、未使用の物がある場合には、その購入金額は必要経費に含めることができません。

また、不動産や車その他設備投資においても、それらは法定耐用年数に基づいて減価償却をしていくものになります。

不動産であれば構造別に耐用年数があり、鉄筋コンクリートでは47年、木造では22年です。

(なお、不動産が損金にできるのは、建物部分のみです。)

設備はそれぞれ対象物によって年数が異なりますが、車は普通自動車で6年となります。

ご存知だと思いますが、これらの節税は耐用年数と定率法あるいは定額法に基づき損金算入額を算出するため、単年の損金効果が大きい節税とは決して言えません。

上記2つの対策よりもまず優先してすべき節税がありますので、そちらをご紹介します。

  • 倒産防止共済
  • 小規模企業共済

当社では何よりも先にまずこの2つに加入しました。

倒産防止共済

利益の繰り延べに使える節税です。

この制度の特徴は以下のとおりです。

▼掛金:5000円から20万円/月の間で自由に設定

▼積立上限:800万円

▼損金性:全額損金

20万円/月の加入で、最大年間240万円が損金計上可能となります。

なお、制度に満期はないため、資金が必要になるまで繰り延べが可能です。

投資金額は、3年8ヶ月を経過すれば100%にて受け取ることができます。

決算直前でも数ヶ月分、1年分の積立掛金を一括前払いする「前納」制度を利用できますので、決算対策としても有効です。

詳しくは以下のページをご覧ください。

小規模企業共済

こちらの制度は法人ではなく個人を対象とした社長の退職金制度となります。

当社では、事業をしていく上で社長と会社の財布は同じと考えていますので、倒産防止共済とセットで必ず加入すべきものと考えています。

この制度の運営も国が行っており、掛金の全額が所得控除となります。

制度の特徴は以下のとおりです。

▼掛金:1000円から7万円/月の間で自由に設定

▼損金性:全額が所得控除

こちらの制度にも、満期はありません。

当社代表の加入ケースでは、39歳で加入しました。

退職予定の65歳では、積立総額の114%の2500万円を受け取る予定です。(掛金は7万円/月、加入年数は26年)

なお、解約事由によって100%以上を回収するために必要な加入年数が異なります。

退職予定が65歳以上と考えている方は、最低でも100%を回収するには15年間の加入年数が必要になるなど、いくつかの基準があります。

加入前にはシミュレーションをすることがおすすめです。

倒産防止共済と同じく「前納」制度および掛金の減額等が使えますので、所得税対策としてまだ加入していない場合は、ぜひご検討ください。

これらが済んだあとの節税には、以下のようなものもございます。

以下、当社が投資してきた節税をスキームごとに分けてご紹介します。

当社が実践してきた法人税の節税スキームの6種類

  1. 短期減価償却を使ったスキーム
  2. 10万円未満の少額減価償却資産を使ったスキーム
  3. 中小企業経営強化税制を使ったスキーム
  4. 海外法人の設立スキーム
  5. 匿名組合への出資を使ったスキーム
  6. 掛金が損金になる積立商品

1、短期減価償却を使ったスキーム

時間の経過とともに価値が減少していく固定資産は、国税庁が定める耐用年数に基づいて数年に分けて減価償却資産として費用計上していきます。

一般的に、減価償却資産には、車やパソコン、設備機器、不動産の建物などがあります。

(不動産の土地部分については、時間の経過とともに劣化するものではないため、減価償却の対象にはなりません。)

ここまでは、ご質問者様もご存知かと思います。

その上で、中古の減価償却資産であれば、規定の計算方法により耐用年数が短くなります。

中古の減価償却資産を活用することで、短期償却ができるスキームです。

中古減価償却資産を使った節税スキームの具体的な節税商品は以下にてご紹介しています。

2、10万円未満の少額減価償却資産を使ったスキーム

10万円未満の固定資産は、「少額減価償却資産」となり、費用として全額がその期に損金計上できます。

「少額減価償却資産」とは、以下2つのいずれかを満たすものを指します。

  • 使用可能期間が1年未満のもの
  • 取得価額が10万円未満のもの

上記いずれかを満たした固定資産を複数購入することで投資額の全額を一括償却できるスキームです。

少額減価償却資産を使った節税スキームの具体的な節税商品は以下にてご紹介しています。

3、中小企業経営強化税制を使ったスキーム

この制度は、中小企業庁による、設備投資による企業力の強化や生産性向上を後押しする制度となります。

この制度を利用することにより、以下の2点が実現します。

  • 固定資産税が3年間1/2になる
  • 投資金額が即時償却または取得金額の10%の税額控除

なお、制度を利用するには、経済産業局より経営力向上計画の認定を受ける必要があり、認定までには一定の期間は要します。

そのため、決算対策での投資は、余裕をもった上で行うことをお勧めします。

中小企業経営強化税制を使った節税スキームの具体的な節税商品は以下にてご紹介しています。

4、海外法人の設立を使ったスキーム

日本の法人税率は約34%に対して、海外には無税や低税率の国・地域が多くあります。

このような国や地域を、タックスヘイブンと言います。

タックスヘイブンと言われる場所に海外法人を設立し、その会社と国際取引を行うことで、税制メリットを受けることができます。

海外法人が得た利益は現地の法人税率が適用されるため、日本よりも法人税が安くなるスキームです。

5、匿名組合への出資を使ったスキーム

このスキームを利用した代表的な節税は、航空機、タンカーオペレーティングリースがあります。

一般的に航空会社は、飛行機をリースにて使用しています。

航空会社へ機体を貸し出すリース会社は、投資家より購入資金を集めますが、その際「匿名組合」を作ります。

実際に機体を購入するのは匿名組合であり、投資家は「匿名組合へ出資」という方法をとることにより、減価償却による損金計上をしなくてよくなります。

そのため、決算直前でももし募集プランがあれば、投資金額の70%から80%を損金算入できます。

匿名組合への出資を使った節税スキームの具体的な節税商品は以下にてご紹介しています。

6、掛金が損金になる積立商品を使ったスキーム

毎月、毎年といったように一定の掛金を積立ることで、掛金が損金になる節税スキームです。

ご紹介した倒産防止共済共済(経営セーフティーネット)や小規模企業共済もこちらに含まれます。

その他には、法人保険があります。

これらの積立商品は、損金性や契約期間はさまざまで全額損金のものもあれば、1/2損金などもあります。

早期解約をした場合には大きく元本割れしてしまうことがありますので、確実に払い続けられるだけの金額を設定した上での加入が重要となります。

掛金が損金になる具体的な積立商品は以下にてご紹介しています。