来期の節税対策として、社用車の買い替えを検討していますが、リースと購入ではどちらの方がいいのか教えてください。

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経営者の友人から、税金対策に社用車としてレクサスを購入したと聞きました。
来期そこそこ利益が見込めるので早めにできることをやろうと思い、私も車の買い替えを検討しています。
そこで、購入とリースではどちらの方がいいのか教えてください。
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車を購入した場合とリース契約をした場合において、それぞれの損金効果の違いをご説明します。
購入の場合
車は固定資産のため、購入した場合の損金計上は法定耐用年数に基づき、数年に分割して減価償却することとなります。
その上で、「軽自動車」か「普通自動車」と「新車」か「中古車」でも節税効果は異なります。
レクサスのような普通自動車の場合、新車であれば償却年数は6年です。
一方、中古車の場合、登録3年10ヶ月を経過していれば2年(実質1年)で償却できます。
減価償却を行う上での定額法と定率法
減価償却をする上で、「定額法」か「定率法」を選ぶことができます。
▼定額法
法定耐用年数に基づき、購入費用を毎年「同額ずつ」償却していく方法
▼定率法
法定耐用年数に基づき、購入費用を毎年「一定割合ずつ」償却していく方法
なお、これらいずれの方法でも、減価償却は月割で損金を算入するので節税目的で車を購入する場合に、最も節税効果が大きくなるのは、決算直後となります。
たとえば、決算直後に500万円で車を購入する場合、それぞれ以下のケースで年間の損金算入額を比較してみます。(*中古車は3年10ヶ月を経過しているものとします。)
- 新車・定額法
- 新車・定率法
- 中古車・定額法
- 中古車・定率法
1、新車・定額法
新車の償却年数は6年です。
定額法は、500万円を6年で割った同額を毎年損金算入していきます。
年間の損金算入額は以下のとおりです。
500万円÷6年=83万円/年
2、新車・定率法
1と同じく、新車の償却年数は6年となります。
定率法は、毎年一定割合をかけた金額を損金算入していきます。
国税庁の資料より、6年の償却資産の毎年償却率は0.417ですので、初年度の損金算入額は以下のとおりです。
500万円×0.417=208.5万円
2年目の損金額は以下のようになり、以降毎年未償却分に対して0.417をかけていくものとなります。
(500万円−208.5万円)×0.417=121.5万円
3、中古車・定額法
中古車の償却年数は2年です。なお、実質1年になるのは次に説明する定率法を選択した場合です。
500万円を2年で割った金額が年間の損金算入額となりますので、以下のようになります。
500万円÷2年=250万円/年
4、中古車・定率法
3と同じく、中古車の償却年数は2年ですが、実質的に1年で償却できるのはこの場合です。
上記の国税庁の資料に基づくと、償却年数が2年の固定資産の償却率は1.000となります。
つまり、100%が初年度損金算入できることとなり、実質1年で全額償却ができるようになります。
よって、年間の損金算入額は以下のとおりです。
500万円×1.000=500万円
購入時に節税メリットが最大になるケース
1〜4の結果から、購入時、最も節税メリットが大きくなるのは、3年10ヶ月を経過した中古車を定率法で減価償却していく方法となります。
なお、注意点として、上述のとおり損金算入は月割にて行いますので、購入時期は重要になります。
たとえば、決算1ヶ月前に購入した場合、初年度損金にできるのは1年分の損金算入額の1/12になりますのでご注意ください。
つぎにリース契約の場合をご説明します。
リース契約の場合
リースは、車両を3年・5年といった期間で契約し、毎月一定額を支払う仕組みです。
当期損金に計上できるのは、契約から決算までの月分のみとなります。
そのため、先ほどの例と同じく決算直後に500万円でリース契約をした場合だと年間損金算入額以下のようになります。
▼3年契約の場合
500万円÷3年=166万円/年
▼5年契約の場合
500万円÷5年=100万円/年
購入とリース契約の節税効果の一覧
まとめると以下のようになります。
*損金算入額はいずれも決算直後の場合となります。
支払い額 損金算入期間 損金算入額 新車・定額法 500万円 6年 83万円/年 新車・定率法 500万円 6年 208.5万円/年 中古車・定額法 500万円 6年 250万円/年 中古車・定率法 500万円 2年(実質1年) 500万円 リース3年 166万円/年 3年 166万円/年 リース5年 100万円/年 5年 100万円/年 節税効果が最も大きいのは中古車を購入し定率法にて損金処理をした場合
当期の節税効果の観点で比較した場合に、最も節税効果が大きくなるのは、上述のとおり「3年10ヶ月を経過した中古車」を購入し、定率法にて損金処理した場合です。
しかし、節税効果以外の観点を考慮するとさまざまな検討すべき点がございます。
たとえば考慮すべき点に以下のような点があります。
- リースの場合、毎月定額のため資金繰りに余裕ができる
- リースの場合、残価設定のしくみにより、毎月のリース料が抑えられる
- リース期間満了時には買取もできる
- 買取ができないケースの場合、使用する間はずっとお金がかかり続ける
1、リースの場合、毎月定額のため資金繰りに余裕がでる
購入の場合、初期費用として購入代金にまとまった費用が必要になります。
しかし、リースであれば初期費用はないため、資金繰りに余裕ができます。
2、リースの残価設定のしくみにより、毎月のリース料が抑えられる
リース契約の特徴に「残価設定」のしくみがあります。
たとえば、5年後満了期間を迎えても車の価格は0になるわけではありません。
そのため、リース料金は、車両価格から期間満了時の価値を差し引いた金額をもとに算出されることになります。
残価は、車の種類やリース会社によって異なりますが、実際の毎月のリース料金は上記でご説明した例よりも安くなります。
3、リース期間満了時には買取もできる
契約内容によっては、期間満了時に車を買取りすることができます。
リース契約によって初期費用の支出を抑えながら、最後に買取ができるため「1」と同様、資金繰りに余裕が生まれます。
4、買取ができないケースの場合、使用する間はずっとお金がかかり続ける
3でご説明したような、買取ができない契約の場合は、契約期間が終了したら再度リース契約をすることになります。そのような場合、使用する間はずっとお金がかかり続けます。
もし購入した場合、どのくらいの期間使用されるかによっても異なりますが、もし壊れるまで使い続けるような想定であれば、最終的な支出額はリース契約の方が大きくなります。
以上のような点も踏まえて、ご質問者様の状況に合わせてご検討ください。